外見を若々しく保つ目的で、そうした美容外科的なアプローチをすることについては、各人の生き方次第です。私の真似をしろとも、それがいいとも言うつもりはまったくありません。ただし、例えば顔の形を変えるような美容整形手術に対する価値観や好悪、正邪は別にして、外見を若く保つことのメリットは、多くの人が想像する以上に大きいと思います。
「髪を増やしたいけど、急に増えたら陰口を言われるかも」「シワがいきなり減ったら、周りの注目を浴びそう」──などと気になるかもしれませんが、いざ清水の舞台から飛び降りてみると、心境が一変し、何事に対しても前向きになっている自分に気がつく人は少なくないようです。
男性ホルモンの減少やその他の理由による老化現象に抗うことなく、そのまま放置していると、様々な健康上のデメリットを生じさせます。外見に関わる頭髪や顔のシワ、たるみに対しても、老け込んでいく自分の見た目に落ち込むことがあるかもしれないし、少なくとも若々しい気分でいるのは難しいと思います。
なお、日本の保険診療は「病気になった」時は有効ですが、「今より元気になるため」の医療には使えないことがほとんどで、美容外科などは自費診療が基本です。歳をとって「今より元気になりたい」人は大勢いるのに、それが医療の対象になっていない現実があるのです。
しかし、「患者を幸せにする医療」「患者を若返らせる医療」という観点から考えると、内科などよりも美容外科のほうが優っているのではないか、とさえ私は考えています。(了)
ベストセラー作家の和田秀樹医師が現役世代の悩みを吹き飛ばす「生き方」のコツを指南(撮影/三浦憲治)
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹 こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。