しかし、そうした薄毛の治療薬には副作用としてED(勃起障害)があります。実は男性が歳をとるほどDHTが増えていくのは、テストステロンの不足を補っている側面があります。DHTの男性ホルモンとしての作用は、テストステロンの3倍くらい強力だとされています。
つまり、薄毛治療のためにDHTを抑制してしまうと、男性ホルモンの働きが弱まることになり、EDという副作用につながるわけです。そのため、私のクリニックでは薄毛治療でプロペシアを使う時は、同時にテストステロンも補充できるように飲み薬などを処方しています。
しかし、AGA治療の多くは皮膚科で行われるため、副作用までカバーする処方がされないケースが目立ちます。プロペシアはもともと泌尿器科系で使われる前立腺肥大症の薬として開発された経緯があるため、慣れていない皮膚科では見過ごされる傾向があるのかもしれません。
私自身は、薄くなってきた頭髪が気になる場合は、もちろん植毛でもいいと思いますし、カツラを着けてもいいと思います。外見から若返ろうとする、そうした男性の努力を「ヅラ疑惑」などと言って揶揄するのは世界で日本くらい。実にくだらない風潮です。
「今より元気になる」医療
顔のシワやたるみが気になり出した時の対策にしても同様ではないでしょうか。ボトックスやリフティングなど、美容外科分野で行われる若返りのための努力を「反則」と思う限りは、見た目が老けていくのは当たり前です。
私は現在63歳ですが、血圧や血糖値をあまり気にしない一方で、老け込むのは気にします。私自身は男性ホルモン補充療法も受けていますし、顔にボトックス注射や血小板を注入したりしています。
ボトックス注射はボツリヌストキシンという毒素を注入するので、抵抗があるかもしれませんが、現在ではほとんど無害であることがわかっています。顔の表面がピッと張るので表情が乏しくなると思われていますが、私の使っているディスポートという商品名の薬品は表情が残りやすい種類のものです。
血液の中にも含まれる血小板は、傷口を塞いで細胞分裂を促す作用があるのですが、それを肌の中に注入すると、細胞分裂を盛んにして肌をふっくらさせることができるのです。よく知られるヒアルロン酸のほうがより強い効果がありますが、注入した際に違和感があるので、私は好きではありません。