火災に見舞われた地域も(石川県輪島市)
ひずみが限界まで来ている
最も警戒しなければいけないのが南海トラフ地震だろう。
「南海トラフ地震は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込む際にできたひずみが限界に達したとき、ユーラシアプレートが跳ね上がることで発生します。
能登半島地震で太平洋プレートの動きが活発化している可能性があることがわかったので、その太平洋プレートに押される形でフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる状況です。そうなれば、ユーラシアプレートのひずみは限界まで来ていて、いつ跳ね上がっても不思議ではありません」(高橋さん)
過去の経験則では、南海トラフ地震が発生する数十年前から、能登半島を含め九州にかけての西日本で地震が多くなる。今回の能登半島地震もその一環だと考えられるという。
内閣府は南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は「70〜80%」と予測している。高橋さんは具体的にこう警鐘を鳴らす。
「プレートのひずみが限界に来ているのであれば、最悪の事態を想定すると、来年4月に開催が予定されている大阪万博までに南海トラフ地震が発生する可能性があります。タイムリミットは迫っていると言えるでしょう」
プレートがせめぎ合う「地震の巣」
南海トラフ地震は、震度7の激しい揺れ、そして10mを超える大津波が太平洋側の関東から九州の沿岸部を襲い、最悪の場合、死者数は32万人と予想されている。だが、恐怖はそれだけにとどまらない。南海トラフ地震もまた、ほかの地震に連鎖する可能性があるのだ。
関東地方の南方沖には、かつて関東大震災を引き起こした「相模トラフ」がある。高橋さんは南海トラフ地震が相模トラフ地震と連動する「スーパー南海地震」に発展する可能性を指摘する。
「茨城県から首都圏はもちろん、東海地方や近畿、沖縄はもとより、台湾、インドネシアにまで及ぶという超広範囲への被害が予想されます。M8.5クラスの巨大地震が立て続けに発生するのです。スーパー南海地震によって発生する津波は、最大で30mを超えると予想しています。これはビルの9階ほどの高さに相当します。東日本大震災の津波は、最大でも16.7mだったことを考えると倍近い 。死者数は最悪の50万人に達すると考えられます」
南海トラフ同様に「30年以内に発生する確率が70%」と予想されているのが、首都直下地震だ。直下型は予測が難しいとされている。だが、日本列島が地震活動の活発期に入っているいま、いつ起きてもおかしくない状況にあると言える。発生した場合、政府は東京だけで約2万3000人の死者と95兆円の経済的損失が出ると試算している。
※女性セブン2024年1月18・25日号
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