薬をやめたことで元気になった人も(写真/PIXTA)
Mさんのように、薬をやめたことがきっかけで体の不調がウソのようになくなったという体験をした人たちは大勢いる。数多くあるその実例を紹介していく。
高齢者は加齢に伴い、体や脳の機能が低下することでめまいやふらつき、物忘れなどが起こりやすい。多くの人は「年のせいだからしょうがない」と思い込むが、国際未病ケア医学研究センターの医師・一石英一郎さんは薬が原因の可能性があると話す。
「体のふらつきや集中力・記憶力の低下に悩み、周囲から“認知症では”と心配された70代の女性がいました。診察してみると、原因は糖尿病の薬でした。体調不良で食事が不規則になったり、風邪気味だったりすると薬の効果が不安定になる。その女性は薬が効きすぎて、低血糖になっていたのです」
長澤さんが低血糖の危険について説明する。
「筋肉は糖と脂肪、心臓は脂肪がエネルギー源ですが、脳は100%糖だけで動いている。低血糖になると脳の中枢にある呼吸や心臓の動きなどを司る部分に悪影響を及ぼし、昏睡に陥ったり、最終的には命を落とすこともあります」
日本初の「薬やめる科」を設ける松田医院和漢堂院長の松田史彦さんは、一日中ぐったりし、家族に認知症だと思われていた80代女性を診察したことがある。
「減薬したいとのことで7〜8種類あった薬を半分くらいに減らし、最後に逆流性食道炎の治療でのんでいた『プロトンポンプ阻害薬』をやめたところ、診察のたびに顔色がよくなり、家事ができるほど元気になった。あいまいだった記憶もはっきりしました」(松田さん)
胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬は認知症を引き起こすとの研究結果があり、特に高齢者には慎重に使用すべき薬だ。一石さんはほかにも気がかりな副作用があると指摘する。
「強い腰痛と膝痛があるため鎮痛剤を処方されていた60代の女性は、胃が荒れやすいためプロトンポンプ阻害薬を処方されていました。服用後、下痢が止まらなくなり、いろいろな検査を経ても原因がわからなかったのですが、内視鏡検査で大腸の粘膜を採取して調べたら、プロトンポンプ阻害薬の副作用により引き起こされた膠原線維性大腸炎と判明した。実際に服用をやめさせたところ、すぐに下痢はおさまりました」(一石さん)