日体大は元・稀勢の里らの牙城に
その一方、協会執行部となる理事の一角を“日大枠”に誕生させた。2014~16年は出羽海一門の出来山親方(元関脇・出羽の花)が出羽海部屋付き親方でありながら日大OB初の理事となった。相撲担当記者が言う。
「元理事長の出羽海親方(元横綱・佐田の山)の部屋に、田中氏が日大相撲部OBである久島海や舞の海、出羽の花などを入門させたことへの返礼とされている。その後、境川親方が理事に就任し、2020年2月の理事選では日大枠を木瀬親方(元前頭・肥後ノ海)にバトンタッチさせようとしたが、木瀬部屋の日大出身の英乃海と紫雷が裏カジノに出入りした疑いが発覚。これにより木瀬親方の理事選出馬は白紙となった」
田中氏は1999年に日大理事、2008年に理事長に就任したが、相撲部の卒業生を角界に送り続けるなど角界への影響力は変わらなかった。ところが、2021年11月に日大板橋病院をめぐる背任行為で、東京地検特捜部に所得税法違反で逮捕されると、同年12月に日大理事長を辞任した。田中氏の失脚によって角界への人材供給の流れにも変化が見られるようになった。前出の相撲担当記者が言う。
「親方が日大OBである追手風部屋(元前頭・大翔山)と木瀬部屋を中心に日大卒業生を入門させてきたものの、最近になってOB以外で田中氏と関係を深めてきたのが元横綱・白鵬の宮城野親方。鳥取城北高から日大に進んだ石浦(現・間垣親方)や山口(元前頭・大喜鵬)の存在もあって食い込み、日大で学生横綱になった川添(現・輝鵬)や祖父が米国人の大谷などが相次いで宮城野部屋に入門している。
ただ、鳥取城北高を経由して田中氏と太いパイプを築いた格好の白鵬だが、田中氏が亡くなったことで日大出身者の入門先はまた、親方が日大OBの部屋に限られていくのではないか。最近になって存在感が高まっている大の里ら日体大出身者については、大の里が入門した二所ノ関部屋(元横綱・稀勢の里)や日体大OBの中村親方(元関脇・嘉風)が太いパイプを作りつつある。白鵬は大学相撲部とのルートを一から築かなければならなくなったのではないか」
日大のドンの死去は、今後の角界の弟子スカウト戦略にも影響を与えそうだ。