青天の霹靂だった「閉園通告」
人気声優の最前線に位置するAqours(ランティスHPより)
こうした背景から閉園まで1か月もない突然の発表には国内外から多くの嘆きの声が聞こえている。同園の伊藤裕館長がNEWSポストセブンの取材に応じた。(以下、「」内は伊藤館長)
「閉園は私たちの株を7~8割所有している株式会社オーロラというオーナーの意向です。オーナー自体も(あわしまマリンパークの)経営権の譲渡は以前から考えていたみたいで、1年ほど前から動いていたという話を聞いています。ただ、なかなか条件が合わなかったみたいです」
伊藤館長によると、同園の来場者数はかつての水族館ブームの頃には年間15万人前後。20万人に達した年もあったという。それから徐々に減少が続き10万人を大幅に下回っていたが、救世主は『ラブライブ』だった。10万人を超える来場者数をキープできるようになったが、新型コロナによって半分以下まで落ち込み、一気に赤字に転落した。コロナ禍が明けたこの1年は8万人ほどまで回復していたが、館内の修繕費などに回すほどの余裕はなかったという。
オーナーから同園の経営を手放す意向を告げられたのが今年1月中旬だった。
「コロナ禍の時に一度、『閉園したい』という話はありました。赤字になっているわけだからオーナーとしては当然のことですよね。その時は『どうにかします』と返答をして対策もしていましたが、それからは閉園についての話し合いはなく、コロナも収束して収益が少しずつまた戻ってきた状態だった。それが呼び出されて、『閉園することにした』と。(青天の霹靂という質問に)そうですね。正直驚きました。
これは私の責任でもあるのですが、営業して、売り上げをあげて、収益で館内をリニューアルするという流れを作れなかった。追いつけなかった。コロナで収益が減ってしまい、修繕やリニューアルが遅れる。で、コロナが明けても、今度は燃料代高騰だったり、餌の原料高騰で。『ラブライブ』のファンの方々もかなり助けてくれましたが、お客さんの数もすぐにコロナ前の水準にとはいかなかった。それで、オーナーの気持ちを変えられなかった。責任を痛感しています」
そのため、1月中旬から伊藤館長は新しいオーナーを見つける必要に迫られ、人づてに声をかけ続けていたという。しかし、オーナーの判断もあり、「ここがリミットだ」という理由で1月22日の発表になった。
「オーナーからは16時すぎに(告知を)ホームページに出すようにって言われまして。ただ、従業員が告知で知るということは一番やってはいけないことなので、その日、出勤してる子たちに集まってもらって説明して。従業員も閉園を伝えたら、目が点というか……昨年夏の営業がいい感じで終わって、『これからも頑張っていこうね』って伝えていた矢先でしたので。
それからXで発表しました。閉園時期についてはオーナーも考えはあったと思うんですよ。それこそ(手放すことを決めた直後の)1月末とかでもあったわけです。私も粘り強く、交渉して少しずつ遅らせていたんですが、この3連休までが限界でした」
しかし、館内では閉園に向けた準備の様子などは見受けられなかった。これについて伊藤館長はこう胸中を明かす。
「実際のところ、現場の私どもとしては閉園を諦めていないところもあります。いまも新しいオーナーを引き続き探しています。ですから、閉める準備もしていません。ただ時間はありません。2月12日の閉園と告知しているわけですので。それまでに新しいオーナーが見つからなかったら一度お休みすることにはなりますが、オーナーを探すことを含めて再開に向けての活動は続けていきたいと考えています。動物たち、そして従業員は一番大切な存在ですので、閉園後も可能な限り継続に向けて努力していきたい。
告知を出した後、国内、海外のたくさんの方々からのメッセージ、温かい言葉を頂いています。これからもマリンパークを応援してもらえるように続けていきたいと思っていますのでよろしくお願いします」
■取材・文/赤木雅彦