「私は、どちらかといえば“放っておいてほしい派”なので、YouTubeをはじめとするSNSの、つながり合いを求める分野が苦手でした。携帯電話という機械的なものに時間を割かれることも嫌いでした。
でも、いままでの思い込みに縛られていては新しい道は開かれない。だから自分をひっくり返すようなことをしたい!と思い、大嫌いなものを試してみました」
あえてやってみた感想は?
「それが……素晴らしかったです(笑い)! 新しい出会いが続々と飛び込んできて、人生がさらに面白くなってきました。
根がせっかちな私にとって、YouTubeは思い立ったらすぐ形にできる点が素晴らしい。スマートフォンの撮影機能も進化しているから、感動の臨場感も表現できる。勉強しがいのある世界です。
テレビで番組を立ち上げようと思ったら、企画を提出して、大勢のスタッフが集まって、スポンサーを探して……という果てしない道のりになる。それに、残念ながらいまの日本のテレビは、大人が楽しめるエンターテインメントが形になりにくい状況です。ならば、自分が面白いと思う映像を自力で作ればいいんだと思いました」
先ほど山口の口から飛び出した「禊ぎをするように洗い流し、身ひとつで出直す」という言葉が気になり、改めてその真意を伺うとこんな答えが。
「思い切って、心の大掃除をしました。そうしたら腹が据わり、『どこからでも来い!』という、最高に楽しい心境になりました。
還暦のおかげで、この先10年、20年という歳月の価値が、これまでよりリアルに感じられます。桜の花もあと10回見られるかな?と認識することは、決してネガティブな発想ではなくて、いまある命への感謝と感動が心に満ち溢れてきます。だから本気で、限りある時間の中で私は何を選択していきたいか、嘘のない勝負をしたいです」
(第2回につづく)
【プロフィール】
山口智子(やまぐち・ともこ)/1964年栃木県栃木市生まれ。短大在学中よりモデルとして活動した後、1988年NHK連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』で俳優デビュー。1990年代は数々のドラマ、映画に主演し、1995年俳優・唐沢寿明と結婚。俳優業に留まらず世界各国の文化や芸術に触れた旅の体験を発信し、2023年7月「ツアーグランプリ2023」の「兼高かおる賞」を受賞。8月にはYouTube『山口智子の風穴!?』を開設。近年の出演作は映画『春に散る』(2023年)のほか、ドラマ『ペンション 恋は桃色 シーズン2』(FODで配信中)に出演。
◆山口智子プロデュース音楽映像シリーズ「LISTEN.」 1000年後の未来に伝える「タイムカプセル」として、音楽文化を記録した地球の映像ライブラリー。取材と撮影は、山口と米国のディレクターを中心として、ハンガリーの撮影スタッフと共に少人数で世界を巡ってきた。10年に及ぶ旅の記録を記した書籍『LISTEN.』(生きのびるブックス)も好評発売中。書籍内のQRコードから、「LISTEN.」の映像を体感できる。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2024年2月8日号