ライフ

明治時代の初代門司駅遺構が出土 都市開発と歴史保存、両立の難しさ

現在の門司港駅。外壁は石貼り風にモルタルを塗り、屋根は天然石で葺いている(2020年6月撮影:小川裕夫)

現在の門司港駅。外壁は石貼り風にモルタルを塗り、屋根は天然石で葺いている(2020年6月撮影:小川裕夫)

 日本の鉄道の歴史も150年を超えると、その初期に建設された建物や施設、設備などは近現代史の記録となる貴重な歴史的遺物だ。ところが、現在も使用されている駅、とくにターミナル駅ともなると、現代の社会生活を円滑にすすめるために様々な面で更新しないわけにはいかない。北九州市の公共施設建設予定地で見つかった初代門司駅(1891年開業)遺構をめぐる保存について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 2023年9月、福岡県北九州市は門司港駅の隣接地で市の公共施設を建設するため、発掘調査を実施した。

 同調査では明治時代に建設された初代・門司駅の遺構が確認されたほか、鉄道関連の出土品として2代目の門司駅と推定されるアメリカ・ブリッジ社製の転車台紀年銘板や九州鉄道(現・JR鹿児島本線)の社標が入った小碗などが出土している。

 さらに、古墳時代のものと思われる須恵器、平安時代のものと思われる白磁、江戸時代のものと思われる磁器など、鉄道の枠を超えた歴史を物語る出土品も多く発掘された。

「同地には市の複合施設を建設する計画があり、そのために2023年9月から12月末まで発掘調査に取り組みました。調査によって、初代・門司駅の遺構である機関車庫や倉庫などが確認されています。機関車庫は残存長が約32.2メートル、幅11.9メートルと大きなもので、駅舎の基礎部分や地盤沈下を防ぐために丸太を使った胴木や砂利を敷き詰めて型枠をつくった後にコンクリートを流し込むといった土木技術が用いられていることも判明しました」と説明するのは北九州市市民文化スポーツ局文化企画課の担当者だ。

 初代と2代目の門司駅にまつわる発見は、日本の近現代史を語り継ぐうえで重要なものだ。現在は北九州港の一部となった門司港に隣接する駅が、なぜそれほど重要な存在なのか。

九州の鉄道の起点となった門司の発展

 遺構が発見された初代・門司駅は、1989年に開港し横浜、神戸と並んで日本三大港のひとつに数えられた門司港とその周辺の往時の発展を伝える。多くの貿易会社や商社が支店・出張所を構え、明治期から昭和初期にかけて経済的に繁栄した当時を偲ばせる建物群は、現在はその佇まいが修復されて「門司港レトロ地区」として観光客でにぎわっている。美しい赤レンガの建物群の印象が強く残るレトロ地区の建物のひとつに九州鉄道記念館がある。これは門司港に初めて鉄道を引いた九州鉄道の本社社屋だった。初代・門司駅の隣接地に所在した本社は、博多にあった仮本社を移設させたものだった。つまり、九州鉄道が本社を構えるほど、門司は重要な都市だった。

 明治時代の門司の繁栄に関わった鉄道は九州鉄道だけではない。1888年に兵庫駅─明石駅を開通させて営業を始めていた山陽鉄道が、1901年に赤間関(現・下関)駅へと線路を延したことで加速する。山陽鉄道が下関まで延伸すると、門司―下関間を鉄道で移動できる関門連絡船が就航したことで本州と九州の移動はさらに活発になり、人とモノが行き交う門司の重要性がますます増すこととなった。

関連記事

トピックス

杏が日本で入院していた
杏が日本で極秘入院、ワンオペ育児と仕事で限界に ひっきりなしに仕事のオファーも数日間の休みを決断か
女性セブン
佳子さま
【不適切なクレームが増加?】佳子さまがギリシャ訪問中に着用のプチプライス“ロイヤルブルーのニット”が完売 それでもブランドが喜べない理由
女性セブン
都知事選に向けての出馬表明は不鮮明なまま
【最近のコンビニのお弁当は…】多忙を極める小池百合子都知事 同居男性の転居、愛犬との別れ、都庁で若手職員の離職が増加…深まる孤独感
女性セブン
一躍、注目の存在に(左から丸田湊斗、清原勝児、延末藍太)
「レクサスに乗りたい」慶大の“美白プリンス”丸田湊斗が明かした「将来の夢」にOBから心配の声「斎藤佑樹の“二の舞”にならないで…」
NEWSポストセブン
昭和42年(1967年)に創業の亀の湯。5月16日、公式Xにて度重なる客のマナー違反を理由に急きょ閉店を発表した。
【神奈川老舗銭湯がカスハラ閉店】サンダル盗難、蛇口破壊、女湯のぞき、ゴミで溢れる駐車場には包丁が……店主絶望の決断も再建に立候補の声「お風呂屋さんをやりたい人が」
NEWSポストセブン
活動を休止中のもたいまさこ、今秋ドラマ主演予定の小林聡美
《3年間女優活動ナシ》もたいまさこの復帰願う小林聡美、所属事務所が「終活」で第二の旅立ちへ
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子(インスタグラムより)
《三田寛子が中村芝翫の愛人との“半同棲先”に突入》「もっとしっかりしなさいよ!」修羅場に響いた妻の怒声、4度目不倫に“仏の顔も3度まで”
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
【独占スクープ】中村七之助が京都のナンバーワン芸妓と熱愛、家族公認の仲 本人は「芸達者ですし、真面目なかた」と認める
女性セブン
田村瑠奈被告
【戦慄の寝室】瑠奈被告(30)は「目玉入りのガラス瓶、見て!」と母の寝床近くに置き…「頭部からくり抜かれた眼球」浩子被告は耐えられず ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
反自民、非小池都政の姿勢を掲げている
《一時は母子絶縁》都知事選出馬・蓮舫氏、長男が元自民議員との養子縁組解消&アイドルを引退していた
女性セブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【絶望の浴室】瑠奈被告(30)が「おじさんの頭持って帰ってきた」…頭部を見た母は「この世の地獄がここにある」 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 名古屋にも抜かれる「大阪沈没」衝撃予測ほか
「週刊ポスト」本日発売! 名古屋にも抜かれる「大阪沈没」衝撃予測ほか
NEWSポストセブン