『君が心をくれたから』 に主演する永野芽郁
競争激化で高まる映像美への欲求
ではなぜ冬ドラマで景色にこだわった作品がそろったのか。本来ロケは放送時の季節を踏まえて、外出の増える春ドラマや夏ドラマで行われることが多く、さらに秋ドラマでもクリスマスに絡めた物語などで見られる一方、冬ドラマはスタジオ撮影の作品がベースとなっていました。
しかし、人々の間に「冬は空気が澄んでいて景色が美しく見える。特にライトアップなども含めた夜景が美しい」というイメージがあるのも事実。寒さや手間と費用からスタジオ撮影で済ませる作品が多い中、ロケを多用するほど差別化でき、それが遠方であればなおさら際立った映像美を印象づけられる可能性が広がります。
また、各局の制作サイドが思い切った遠方ロケに挑んだ背景にあるのは、ここ約2年間、春と秋の改編期が来るたびにドラマの放送枠が増えて競争が激しくなったこと。
まず「ジャンルや映像が似たものにならないようにどうオリジナリティを出して視聴者を引きつけていくのか」を考え、さらに「ならばこういう物語を作ればいいのではないか」「その設定ならより美しい映像が必要かもしれない」「それならこういうところでロケをしよう」などと企画を進めていく様子がうかがえます。
事実、遠方ロケに挑んだ『君が心をくれたから』『大奥』『新空港占拠』『さよならマエストロ』がすべてオリジナルであることを踏まえても制作サイドの強い意欲が感じられるのではないでしょうか。つまり、「労力やお金をかけてでも難しい企画に挑む」というクオリティー・ファーストの意識が遠方ロケにつながっているのです。
地域活性化狙いで進むロケ誘致
そして最後にもう1つあげておきたいのが、全国の自治体でロケ誘致に向けた活動が活発化していること。
各地のフィルムコミッション、ロケーションサービス、観光コンベンション協会など、あるいは観光課が率先して誘致を行い、なかには市長などのトップ自らが誘致に乗り出すというケースも増えています。