一方、原告の万木市議は《一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件記事(産経新聞)は、(略)睡眠状態の間に性的行為を行う犯罪行動を行う人物であるという印象を一般の読者に与えるものであるから、原告の社会的評価を著しく低下させるものである》と、被害を訴えた。
両者の主張は真っ向から対立。提訴から1年5カ月、高島市民約4万人を巻き込んだ泥沼裁判は1月19日、ついに判決が下った──。
判決に書かれていた「合意の有無」
大津地裁は中川市議の新聞での発言が万木市議の社会的地位を低下させたとして、11万円(弁護士費用1万円含む)の支払いを命じた。判決文では事件の真実相当性について、被告を中川市議、原告を万木市議としてこう記されている。
《被告の尿や毛髪の鑑定結果から有意的な薬物が検出できなかったのであって(なお、塗り薬のような成分なるものが有意的なものとは解し難い。また、原告から塗り薬を塗布された旨の認識を被告は示していない)、薬物の影響によって意識が途切れたのも客観的に裏付ける証拠はない》
レイプドラッグ使用は認めなかったことになる。また、ふたりの車内での性的行為に関しても「被告の合意がなかったことを裏付ける十分な証拠がない」とした。
判決文では、こう結論付けられている。
《PTSDの診断を受けているとしても、その原因が原告による合意なき性的交渉にあると直ちにいえるものではない。また、当日の車内において友好的に見える写真撮影に被告が応じていることからわかることに照らすと、合意があった可能性を払拭し切れない》《被告の発言に基づく記事の主要な部分について、これが真実であるとの証明があったとはいえない》
社会的評価を低下させたとして、主張が認められた万木市議を取材すると、「これに関してはノーコメントにしてください」との回答だった。一方、中川市議はこうコメントした。
「一部敗訴ということですが、私の中では大半の主張を認めてもらえたと前向きにとらえています。ただ、判決理由にドラッグに関しての真実・相当性の判断できなかったという部分があり、そこは控訴というかたちで焦点を絞って資料等を準備して臨みたいと思います。万木市議に対しての思いは当初と変わっておらず、議員辞職勧告に関しては真摯に受け止めて早期に辞職してほしいと思っています」
中川市議側は判決を不服として控訴。決着は高裁へと持ち越されるが、市民はどのように受け止めているのだろうか。