「特撮番組はどうしても説明セリフが増える宿命があるんですよ」(高野さん)
SNSでは拾うことのできない「子供たちの声」
『キングオージャー』といえば、「貴様ら民は歯車だ!」などと偽悪的な言動をするギラ(酒井大成)、二枚舌なカグラギ(佳久創)、クールで無表情のリタ、「行間を読んでくれ」と微笑むジェラミー(池田匡志)など、仲間同士でも本音や本心を簡単には明かさない、ポリティカルスリラー(政治劇)のような一筋縄ではいかない作劇が特徴的だ。
「子供向け作品だとセリフで伝わることって少ないと思うんですよ。子供の理解度っていう意味ではなくて、未就学児って人が喋っていることに基本興味がない。説明を聞いて納得したいのって大人なんですよ。子供はもっと、楽しいとか悲しいとか気持ちを全身で表現してくれれば、共感してくれる。大人よりも遥かに感受性が豊かで、めっちゃシビア。
子供にもわかるようにと、セリフを増やしちゃうと逆に伝わらないから、むしろセリフはギュッとしました。でも雰囲気だけは、たとえば『今、この人たちはピリッとしているんだ』っていうのが伝わるように構築しました」
放送が中盤を迎えた頃、高野は自身のSNSで「子供たちの声を聞かせてください!」と呼びかけた。反響は凄まじく、リプライだけでも700件以上、300を超えるメールが、しかもその多くは長文で送られてきたという。
「ありがたいことに、それまでSNSで大人が盛り上がってくれたけど、子供の反応だけはわからなかったんですよ。大人の好評に寄りすぎると、本当に見せたい子供を置いていってしまうんじゃないかっていう怖さがあったんです。
聞いてみて一番嬉しかったのは、ブーブークッションに座るくだりが子供にめちゃくちゃ評判が良かったんです。保護者の方からは、『子供から何度も「見せて」と言われて再生させられてます』って(笑)。その感想を受け取った時点で3ヶ月近く前に放送された回だから相当喜んでくれたんだなって。ベタに笑えるシーンは、大人からは『何で入れるんだ』って言われちゃうんですけど、どんなにシリアスな回でも入れようって思いましたね。
あと一番大きい気づきは、4~5人家族のご意見。見ている場所が全員違うんですよ。お兄ちゃんはロボ戦と戦闘シーンが好きで、自分も手を振り回して見ている。でもお話の場面は飽きちゃうのか見ていない。次女はアクションシーンは怖くて見れないけど、ヒメノ様が出てくるとテレビの前にやってくる。で、一番ちっちゃい子は、内容はわからないけどオープニングのときだけ踊る。お母さんはジェラミーが登場するといつも泣いていて、お父さんはヤンマ(渡辺碧斗)が好き、みたいな。
自分の方向性として決めたのは、とにかく広げること。意外と子供は好きなシーンが1個でもあれば見てくれる。全部をかじりつきで見るわけじゃないけど、戦いが好きだから見る、ヒメノ様が好きだから見る。大人と違って好きな瞬間があれば見てくれる。だから、いろんな人の“好き”を全部しっかり入れようと」