「『夢は必ず叶う』とか民放のゴールデン帯のドラマでは口が裂けても言えないんですよ」(高野さん)
「子供から大人まで楽しめるものを作りたい」
『キングオージャー』は執筆当初の段階から「明るく楽しいものにしよう」というのをスローガンとして掲げていたというように、重いテーマを扱っていても、健康的でポジティブなのが魅力だ。一方、高野自身は「ジメジメした陰湿な人間」だそうで、「子供向けの番組なんだけど、見ると、眼帯つけて左腕に包帯を巻いちゃう子供が日本中に増えるような作品も作ってみたいです」などと笑いつつ、今後も子供に向けたドラマを書いていきたいと言う。
「『キングオージャー』って『子供に分かるの?』『大人向けじゃないか』って言われるんですけど、そもそも『子供向けって何?』って思うんですよ。たぶん、誰も言語化できないし、大抵それって、大人が言うんですよね。
僕が小さい頃は、やっぱり大人が見ているものを見たいと思ったし、子供が見ているものをバカにしていました。だって今一番ヒットしているのが『鬼滅の刃』で幼い子たちが炭治郎の法被を着て走り回っている。あの作品ってめっちゃ首飛ぶし、壮絶な話じゃないですか。描写だけで考えれば子供向けとかじゃない気がするんですよね。だから子供が本当に喜ぶものって、子供に向けることだけ考えて作っても、たぶん届かないと思うんです。
僕の家は、小さい頃はテレビとかゲームは基本禁止でしたけど、母親が近所の子供向けに本を貸し出していたんです。絵本や児童文学だけで2000冊くらいあって、父親はマンガ好きでマンガ部屋があって、僕はそこを行き来して片っ端から読みました。
子供が触れるものって基本的に親に管理されるんですよね。それが悪いかって言うとそうとは言い切れない。だって、自分も父親が『クウガ』や『555』を見たいって言って一緒に見てカッコいいなって思ったし。だから、子供だけに刺さるんじゃなくて、大人も面白いと思えて、これだったら子供と一緒に見たいなって思えるものを作りたいですね。
結局、締めの言葉が『子供から大人まで楽しめるものを作りたい』っていうチープな言葉に落ち着いちゃいましたけど(笑)」
(了。前編から読む)
【プロフィール】高野水登(たかの・みなと)/脚本家。1993年生まれ。主な担当作品は『真犯人フラグ』(日本テレビ)、『TIGER&BUNNY2』(Netflix)、『映像研には手を出すな!』(MBS・TBS)、『賭ケグルイ』(MBS・TBS)、『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日)など。
◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。
撮影/槇野翔太
『王様戦隊キングオージャー』の最終回は 2月25日(日)午前9:30から(テレビ朝日系)にて放送
