米連邦捜査局のプレスリリース。タイトルで「日本のヤクザ幹部」と強調している(米連邦検事局HPより)
2008年、指定暴力団山口組系後藤組組長(当時)が、米ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で2001年に肝臓移植を受けていた事実が明るみに出た。後藤組長が入国できないはずの米国で、しかも肝臓移植まで受けることができた理由を、一部のメディアは米連邦捜査局(FBI)が情報提供の見返りに入国させたためと報じた。名のあるヤクザが米国に入国したと聞けば、業界ではこの手の話を思い浮かべるだろう。後藤組は山口組から2008年に除籍処分を受け、解散している。
入国をめぐる裏事情の噂すら立っていないのだから「やはり自称ヤクザとか、指がないとか、刺青を入れているとか、そんな感じだろう」と前出の組長はいう。ヤクザたちは最初からエビサワ被告をヤクザとは見なしていなかったのだ。米国の情報機関にも日本の暴力団組織を研究している者はいる。エビサワ被告が最初におとり捜査員に接触したのは日本国内だったという報道もある。本人の口からどこぞの組の名前が出ていたのかどうかは不明だが、発表までに事実確認はできたはずだ。
日本の捜査当局も被告が暴力団組員だった事実は確認されず、「農業をなりわいとしたロケットランチャーオタクで、日本国内の暴力団とは関係なく、ヤクザでもない」という。どうやら被告はタイでヤクザの組長を名乗っており、それが米当局の発表につながったらしい。暴力団組員ではないと米当局も知っていたはずだ。それでもエビサワ被告をヤクザの組長と公表した。その狙いは、「マフィアのボス逮捕」のようなインパクトを各国の密売組織に与えることだったのではないだろうか。