阪神・淡路大震災で倒壊した阪神高速道路(1995年/兵家県神戸市。時事通信フォト)

阪神・淡路大震災で倒壊した阪神高速道路(1995年/兵家県神戸市。時事通信フォト)

迫りつつある令和の関東大震災

 内閣府の中央防災会議は2013年に首都直下地震の被害想定を公表。緊急性の高い19か所の震源を特定して警戒を呼び掛けている。

 最も甚大な被害をもたらすのは、品川区と大田区の境界付近を震源とする「都心南部直下地震」(M7.3)だ。同地を震源とする地震が発生した場合、東京の江戸川区と江東区は震度7を記録。東京のほかのエリアや、千葉、埼玉、神奈川で震度6強と予想されている。最悪の場合、首都圏全体の想定死者数は2万2400人、負傷者は12万3000人、避難民は720万人にのぼる。

 危惧されるのは、内陸で起こる「直下型」だけではない。群発地震を発生させているプレートを震源とする「海溝型」が発生した場合も、首都圏は甚大な被害に見舞われることになる。大正時代に10万人以上が犠牲になった関東大震災も、相模湾から房総半島南東沖に位置するプレートが引き起こした海溝型地震だった。

「海溝型も直下型もプレートの動きによって引き起こされます。日本の首都圏は3枚のプレートが重なるところに位置しており、どのプレートが動いても大地震につながる可能性がある。それぞれが連動して、直下型と海溝型が同時多発的に発生する可能性もあるのです」(高橋さん)

 千葉県沖の群発地震は、プレートの動きが活発化していることを示している。今年に入り、関東地方各地での地震も増えている。「令和の関東大震災」は、いつ起きてもおかしくないのだ。

 最大震度7の大地震が首都圏で発生した場合、どのような被害が考えられるか。

 能登半島地震では「地すべり」によって多くの家屋が倒壊したが、高橋さんによれば、都心部でも同じことが起きる可能性があるという。

「火山灰の関東ローム層に覆われた東京の山の手エリアは、実は地震による地すべりが起きやすいエリアでもあります。特に、坂の下に位置する渋谷駅周辺などは危ない。渋谷駅に向かって地すべりが発生し、大惨事になる可能性があります。東日本大震災の際に、帰宅しようとする人が渋谷駅に押し寄せましたが、あれは危険な行動なのです」

 激しい揺れによって木造家屋は軒並み倒壊し、火の海が広がる。市街地では「火災旋風」という火炎の竜巻が発生することも考えられる。前出の内閣府の資料によると、全壊または焼失する建物は関東で最大61万棟に達し、想定死者数の約7割が火災により亡くなるとされている。

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