東日本大震災で発生した津波。(2011年/岩手県宮古市)(写真/アフロ)
地下鉄のホームで感電死する
深刻な液状化現象にも見舞われる。神戸大学都市安全研究センター教授の吉岡祥一さんが指摘する。
「強い地震の揺れにより、地中でバランスが取れていた砂と水の関係性が崩れることで液状化現状が発生します。都心南部を強い揺れが襲えば、東京湾岸の埋め立て地や河川の沿岸部などを中心に液状化するとされています。ベイエリアに立ち並ぶタワーマンションにも深刻な被害が出る可能性は否定できません」
東京都が2022年5月に公表した首都直下地震の「災害シナリオ」によると、湾岸地域では液状化により約1500棟が居住困難になるとされている。
東日本大震災では約2万人が亡くなったが、その大半は「津波」による犠牲者だった。もし相模トラフの周辺を震源とする地震が発生すれば、首都圏を大規模な津波が襲うことも考えられる。地震発生から5〜10分ほどで、お台場や豊洲などの湾岸地域、銀座、有楽町、品川など東京の南東部に津波が到達するという。
「津波は陸地に到達後、秒速10mほどのスピードで移動します。人間の足では逃げることは不可能で、数cmの高さでも足をすくわれて流されてしまいます。地下街や地下鉄のホームにも流れ込む。地下鉄は高圧電流が流れているので、海水が入り込めば感電死する危険性もあります」(高橋さん)
津波は河川を遡っていくため、東京の下町エリアなども危険だ。堤防が決壊すれば洪水が起き、大きな被害に見舞われることになる。
“海なし県”の住民も安心はできない。例えば津波が利根川を遡上すれば、群馬県付近にまで到達する。その場合、埼玉県の春日部市や幸手市周辺も大きな被害が出るとみられている。
千葉県沖周辺の群発地震によって懸念されるのは、首都圏を襲う大地震だけではない。長年の脅威である「南海トラフ地震」を引き起こす可能性もある。
「群発地震は千葉県南部でも起きていますが、原因となっているプレートは、南海トラフ地震を引き起こすプレートと同じものなのです。このプレートの動きが活発化しているということは、南海トラフ地震の発生リスクも高くなっているということです」(高橋さん)
政府は南海トラフでM8〜9クラスの巨大地震が発生する確率を、「30年以内に70〜80%」としており、死者32万人以上、経済被害も220兆円を超えると想定している。
南海トラフの東端の近くには相模トラフが存在するため、2つの地震が連動することも予想できるという。
「南海トラフと相模トラフが連動すれば、その被害は太平洋側の茨城県から沖縄県にかけて広範囲に及びます。私はそれを『スーパー南海地震』と名付け、近年警鐘を鳴らし続けています。試算では50万人以上の死者が出て、その大半は津波によって犠牲になると予想しています」(高橋さん)
巨大地震が日本列島を襲う日は確実に迫っている。
※女性セブン2024年3月21日号
2024年に関東地方で発生した主な地震
M7の首都直下地震はここで発生する