刑務所での生活は制約が多い。6人用の共同室(イメージ、時事通信フォト)
出所後、半年ほどが“危ない”
2023年4月に出所後、男は初めて自分で家を借りた。「元暴力団というレッテルがあれば、家を借りるのは難しい。だがあいつはず~っと刑務所だからレッテルもクソもない。銀行などのブラックリストに情報もなければ借金もない。きれいなものですよ」というA氏に、男は「家ってどうやって借りたらいいのか?」と聞いたという。
初めて賃貸契約を自ら結んで住む家もでき、彼女もできた。刑務所を出たり入ったりしていたため、世情に疎いわけではなかったが、「『洗濯しておいて。ハミングしてよ』と彼女に言われた時は、便利になった洗濯機の横で鼻歌を歌っていたと。それが柔軟剤の名前と知らず、真面目にハミングしていた」と聞いたとA氏。スマホやキャッシュレス決済は知っていても、ハミングは知らなかったようだ。
そんな生活が半年過ぎ、男は逮捕された。「そろそろ危ないと思っていましたが、やっぱり外で正月を迎えられなかったか」とA氏はいう。毎回出所後、半年ほどが過ぎた頃に何らかの罪で逮捕されていたからだ。初めての家で送る彼女との生活を棒に振った男は、有罪判決を受けた法廷で覚せい剤を使った理由を「腰痛をまぎらわすため」としたが、A氏はそれを聞き「そんなわけないだろうが」と苦笑いしたという。
これから3年超はまた刑務所暮らし、出所すれば70歳近くになるという男。服役するにあたり初めてできた心配事は、「生きてここを出られるかな」だという。