『東京ラブストーリー』に主演した鈴木保奈美
しかし、これに近い編成戦略は過去にも何度か見られました。38年にわたる月9ドラマの歴史をひも解いていくと、実は単純な「月9=ラブストーリー」ではないのです。
まず1987年はメディア業界を描くドラマ枠としてスタート。翌1988年からラブストーリーをベースにしたドラマ枠としてリスタートし、1991年まで“年3作ペース”でラブストーリーを放送していました。しかし、1992年以降は徐々に家族、友情、サスペンス、ホラーなどの実験的なジャンルを織り交ぜるようになっていきます。
1990年代後半から2000年代はラブストーリーが“年2作程度”に落ち着き、2010年代に入ると“年1作のみ”というペースが過半数を占めるようになりました。そして2018年春から2023年春まで“年0作”になっていたのです。
つまり月9ドラマは常にラブストーリーを放送していたのではなく、時代ごとのニーズに合わせて増減させていて、全体の作品数を見ても約半分程度に過ぎません。それでも『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『ロングバケーション』『ラブジェネレーション』などのヒット作が次々に放送された1990年代の印象が強烈なため、「月9=ラブストーリー」という感覚の人がまだまだ多いのでしょう。
実際のところ月9ドラマは「何度かラブストーリーから離れて持ちこたえつつ、再びラブストーリーに戻ってくる」という歴史を繰り返してきました。そんな歴史と培ってきたノウハウがあるドラマ枠だけに、まずは『366日』の序盤に注目してみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。