壇上で挨拶する岸田首相(2013年に開催された「外務大臣就任を祝う会」。参加した広島市議のフェイスブックより)
自民党裏金問題と首相の「祝う会」問題を検察に告発した上脇博之・神戸学院大学法学部教授が指摘する。
「岸田事務所の秘書が、外相就任を祝う会について開催前から『経費を差し引いて残ったお金を寄附する』と説明していたのであれば、この祝う会は岸田首相の政党支部や政治団体の政治資金パーティーとして収支を報告するのが筋です。
岸田事務所はそれを百も承知で、案内状に『政治資金規正法22条の8に基づく政治資金パーティー』との告知をせず、“政治資金パーティーではない”と見せかけたのだと考えられる。最初から政治資金規正法の抜け道はないかと考え抜かなければ、こんな手口にはならない。事務所にこんなやり方を認めていたこと自体、岸田さんの総理や大臣としての資質が問われる」
「初入閣でも大々的にやった」
そもそも、「岸田方式」の原点は、外相就任よりもっと前、第1次安倍改造内閣で内閣府特命大臣(沖縄・北方担当相)として初入閣(2007年8月)した時に遡る。
前出の元岸田事務所関係者の証言だ。
「2007年の初入閣の祝う会のほうが大々的でした。初めての入閣祝いとあって事務所も勝手がわからず、警備はどうするか、ゲストは誰が迎えに行くかなど課題が多く、警察に相談しながら準備したことを覚えています」
前出・広島の元地方議員はこう言う。
「会場はリーガロイヤルホテル広島で1000人以上は集まっていたと記憶しています」
この初入閣を祝う会を岸田首相が政治資金収支報告書でどう処理していたかを調べると、2007年に岸田首相の政党支部に「衆議院議員岸田文雄先生内閣府特命担当大臣就任を祝う会」なる団体から240万円の寄附があり、同パーティーの収益の一部だったことが推察される。しかし、同支部や資金管理団体、岸田文雄後援会の政治資金収支報告書には開催した事実も収支も記載されていない。
これに味をしめた岸田首相は“脱法パーティー”を繰り返してきたと考えられるのだ。だからこそ、政治資金規正法改正論議のなかで、「岸田方式」による抜け道を、規制が及ばない裏金づくりの“聖域”のまま守ろうとしているのではないか。