小学校PTA役員決めで「知的障害を理由に辞退した」と周知させた文書
「うちは離婚して、シングルマザーで育てている。平日も土曜日も深夜まで働かなければ生活がなりたたないから役員ができません」
「親を介護しなければならず、自分も病気がちで……」
中には、涙を見せながら“免除してほしい理由”を語る人もいる。「シングルマザー」については、他にも同じ事情の人が少なくないということで「多数決で免除は却下」となった事例もある。首都圏に住む母親が語る。
「最近離婚して、話したくも知られたくもない事情を告白したうえでもなお、くじ引きの対象とさせられました。あれは“地獄の時間”でした。そのあとすぐ、私が離婚したという噂が学年中に出回っているのを知りました……」
2022年、東海テレビが放送エリア内の500あまりのPTAを対象に行ったアンケートによれば、〈選出の場で事情を説明し、他の保護者が了解すれば辞退可能というPTA〉が19.3%にのぼったという。実に2割の学校で「免除の儀式」が行われているというのだ。
今回判明したような、知的障害者であることを他のPTA役員たちに文書で周知するケースも「免除の儀式」と同様、他の保護者が納得できるような辞退の理由が必要だということなのかもしれない。
PTA問題に詳しいライターの大塚玲子氏は、「PTAというものに対する発想を変えなければいけません」と語る。
「近年は、PTAが希望者だけで行う形に変わってきている印象です。やりたい人がやるのであれば、免除の儀式は起きようがありません。『各学年/各クラスから◯人の委員を出さなければいけない』というルールになっているから、“できない理由をみんなに伝える”という状況に繋がるんです。
希望者が集まって、その人数でやれることをやる。人が足りないのであれば諦める。このような頭の切り替えが必要ですし、実際そのような柔軟なスタイルで行うPTAが増えてきています。コロナ禍ではPTAの活動が制限されましたが、“意外となんとかなる”と感じた保護者が多かったようです。その経験もあって、PTAというものに対する発想の転換が進んだのでしょう」
免除の儀式という歪みを解消するためには、PTAというものの在り方自体を考え直す必要がありそうだ。