女性セブンが取材した「リハビリの名医」
「自力で直す」にこだわると悪化する
戸田医師が話す通り、ひざや股関節の痛みをとるためには、下半身の筋肉を強化するリハビリが欠かせない。体重を支えられる充分な筋力があれば、関節にかかる負担が減るからだ。逆に筋力が衰えると、それが痛みの原因になる。
では、具体的にどう鍛えればいいのか。
整形外科や脳神経外科などの分野で、「起き上がる」「立ち上がる」「歩く」といった動作の機能回復訓練を行うセラピストを「理学療法士」という。関節の障害やスポーツ傷害、腰痛などの治療を専門とする、あんしんクリニック(兵庫県神戸市)で、ひざのリハビリを担当する理学療法士・和田治さんが、自宅でできるひざ痛のリハビリとしてすすめるのが「大腿四頭筋セッティング」という方法だ。
「ひざの下にタオルを丸めて置き、上半身を起こして両手で支えます。 反対側のひざは立てておく。そしてつま先を上に向けたまま、タオルにひざの裏を押し付け、脚をしっかり伸ばします。この姿勢を3秒維持してください。朝昼晩20回ずつを目標に行うといいでしょう」
ひざの痛みをとるリハビリにはほかに、ふくらはぎを伸ばすストレッチやひざを少し曲げて行うスクワットなどがある。
同クリニックで、股関節のリハビリを担当する理学療法士・大田琢磨さんにも、自宅でできる股関節のリハビリの方法を聞いた。
「脚を動かさなくなると、どんどん筋肉が落ちて痛みが悪化するので、あお向けになって片ひざを抱え、体に引き寄せたり、股関節を回したりするストレッチを、痛くない程度に行うのがいいでしょう。また、関節に負荷をかけない運動として、よく医師がすすめるのが水中ウオーキングです」
ほかにも健康雑誌や、書籍、インターネット上には、ひざや股関節の痛みを和らげるさまざまなリハビリの方法がイラストや動画で紹介されている。その中から、やりやすい方法を試してみるのもいい。ただし、痛みの原因は人それぞれ違うこともあるため、必ずしもその人にとってベストであるとは限らないと和田さんは話す。
「たとえば、太ももの筋肉をつけるためにスクワットはとても効果的ですが、ひざを曲げすぎるなど間違った方法で続けると、かえって痛みが強くなることもあります。
そうしたことを避けるために、私たち理学療法士は個々の患者さんの症状に加え、生活スタイルも把握して、その人に見合った内容を適切な方法とレベルで行えるようにメニューを作ります。
自分だけでリハビリを行うことに不安のある人は、整形外科を受診して、理学療法士のアドバイスを受けてください」(和田さん)
理学療法士が提示するメニューを家に帰ってからもしっかりこなし、一緒に前向きに取り組んでくれる人の方が、予後がいいと大田さんは話す。したがって、回復までのパートナーとして、寄り添ってくれる理学療法士が常駐している整形外科を選ぶべし。
「理学療法士の中でもひざ、股関節、肩関節など得意分野が分かれています。理学療法士が多く在籍する整形外科ほどさまざまな症状に対応しやすくなるため、理学療法士の数を指標にクリニックや病院を選ぶのも1つの方法だといえます」(大田さん)