豊島将之九段

「とよぴー」こと豊島将之九段(写真/共同通信社)

AIを駆使してメキメキ力をつける若き精鋭たち

 藤井のライバル候補の大本命とみられてきたのが伊藤匠七段(21才)。両者は同じ2002年生まれだ(誕生日は、藤井が7月19日、伊藤は10月10日)。伊藤は師匠・宮田利男八段や親しい関係者からは「たっくん」と呼ばれている。

 小学生の頃、2人は全国大会の準決勝で対戦し、伊藤が勝利。敗れた藤井が号泣したことは、いまでも語り草になっている。以後は藤井が先行し、史上最年少14才で棋士となり、17才でタイトルを獲得するなど、将棋界の主要な最年少記録を塗り替えてきた。

 一方、伊藤も17才で棋士となり、20才でタイトル挑戦を果たす。藤井さえいなければ、伊藤が次代の覇者と目されてもおかしくないような出世スピードだ。現在までのところ、藤井より後に生まれ、藤井に公式戦で勝ったことのある棋士は、伊藤のほかにいない。もし伊藤が藤井からタイトルを奪えば、席次上はナンバー2に躍進。名実ともに藤井のライバルといえる存在になるだろう。

 伊藤とともに順位戦ではB級2組に所属する服部慎一郎六段(24才)も若手の注目株の一人。若手棋士の登竜門・新人王戦優勝の実績もある。忍者のポーズを取りながらの決めゼリフ「ニンニン!」がファンの間では有名だ。現在はお笑いユニット「もぐら兄弟」と組んで、M-1グランプリ挑戦も表明している。

 2023年度、藤井とともに年間勝率の史上最高記録更新まであと一歩と迫ったのが藤本渚五段(18才)。タイトル戦登場にあと少しまで勝ち進んだこともある。藤井に挑戦するのも時間の問題かもしれない。音楽の趣味においては、藤井と藤本はともにスピッツが好きという共通点もある。

 藤本と同門(井上慶太九段門下)の上野裕寿四段(21才)も大注目の新鋭。2023年度の新人王戦では決勝で上野が藤本を降して優勝した。棋士の養成機関・奨励会にも多くの俊英が集っている。山下数毅三段(16才)は奨励会員として史上初めて竜王戦6組決勝に進み、最後は藤本に敗れたものの、準優勝を果たした。奨励会や、こども大会の成績表を見て、未来の大棋士候補を探すのも一興だ。

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【プロフィール】
松本博文/将棋ジャーナリスト。東京大学将棋部在籍中より将棋書籍の編集・執筆に携わる。名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力し、「青葉」名で中継記者を務める。『ルポ 電王戦』で第27回将棋ペンクラブ大賞文芸部門賞を受賞。『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』『棋承転結 24の物語 棋士たちのいま』など著書多数。

※女性セブン2024年7月4日号

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