ライフ

《汚水で家が水浸し…生活が崩壊》作家・岸田奈美さんが感じた「自分の限界」と責任転嫁を繰り返す「社会の構造」

道端に佇む女性

ネットニュースになるほどの漏水経験を語った作家の岸田奈美(写真/五十嵐美弥)

 日々の暮らしや家族に起こった出来事を、不幸も含めて笑い飛ばすようにつづる作家・岸田奈美さん。新作エッセイ『国道沿いで、だいじょうぶ100回』にも注目が集まる。中学生の時に父親が急逝、母親は車椅子ユーザー、弟はダウン症で知的障害があり、祖母は認知症――と波乱万丈の人生を生き抜いている岸田さんだが、昨年末に起こったある騒動では、挫けそうな気持ちを味わう。そんな中でも、社会について気づいた視点があったと話す。

* * *

「ずっと住みたいと思っていた兵庫県西宮市に今年引っ越しました。それまでは京都府中京区河原町という、東京でいう渋谷のようなところに住んでいたのですが、オーバーツーリズムでバスには絶対に乗れないし、うに丼の価格は1000円から6000円になるほどで、観光客は喜べど地元民の生活はどんどん破壊されている感覚があったんです。でも立地はいいし、引っ越しはお金がかかるし、インバウンドはいつか収まるかなぁ、と様子見していたんです。いつかみんな飽きて奈良に行くはずだ、と(笑い)。

 それが、とあることがきっかけで西宮に引っ越したんですけど、西宮は亡くなった父の出身地であり、生涯愛した街。父は西宮で会社を立ち上げて、リノベーションの会社を経営していました。未だに父の愛したお店や景色が残っていて、父の知人から『この店の、このおやつが好きでよく買ってたよ』と知りようもなかった姿を教えてもらったりして。生前の父はこんなことを考えていたのかなって、知ることができるのがすごくうれしくて、幸せで。

 京都と比べたら人も少ないし、西宮に引っ越せたことは不幸中の幸いだったんですが、きっかけとなる出来事が本当に地獄でした……」(岸田さん・以下「」同)

口では「大丈夫」と言っても限界があった

 その出来事とは、昨年12月に岸田さんが住む部屋に起こった漏水。しかも岸田さんは3日間風邪で寝込んでいたという、なんともしんどいときにそれは訪れた。

「突然、雨を超えてスコールかと思う量の水が、天井から降り注いできたんです。それでリビングと台所が水浸しになって! まず絶版の『大長編ドラえもん』を、浸水していない書斎に投げるように避難させましたよ。私にとってはそれが一番大事だったんですね。パソコンとハードディスクもとにかく守りました。でもハードディスクって動かすと壊れるってことを知らなかったので、避難させた結果壊れましたけど(苦笑)。

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
「どうして卒業できないんだろう…」田村瑠奈被告(30)の母親が話した“大きな後悔” 娘の不登校に焦り吐露した瞬間【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン