ビジネス

《死者も発生》熱中症アラート発令でも止められない建設現場 「発注側は”金を出してるんだからやれ”」「熱中症になるなと言うくせに対策はない」の理不尽な現実

生コンクリートを流し込む作業は予定していた日程を変更しづらい(イメージ)

生コンクリートを流し込む作業は予定していた日程を変更しづらい(写真/イメージマート)

 熱中症の死亡者数は2018年以降、2021年をのぞいて1000人を超えている(厚生労働省調べ)。最新の確定値である2022年は1477人で、記録的な猛暑だった2023年も1000人以下になっているとは予想できない。熱中症による死亡者数が1993年以前は年平均67人だったことを考えると、古くからの暑さ対策では通用しないと考えるのが自然だろう。ところが、現実には命を危険にさらすことを強要するような実態があらゆる場所で起きている。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、労働時間だけでなく熱中症などの対策も真剣に考えてほしいと訴える、建設現場で働く人たちの声をレポートする。

 * * *

「仕事だから我慢して欲しいとしか言えない。法令は遵守しているのだから、問題は国や所轄機関にあるのだと思っている」

 関東地方、舗装やコンクリ、排水、外構などを請け負う下請け建設会社役員の話。あえて下請けの現状を伝えるためにと率直に話してくれた。

「(今回の事件が)コンクリートの打設だとするなら休めない場合が多い。そういう仕事としか言いようがない。交代するほど人もいない場合はとくにそうだ。まして、それで工期を伸ばすかどうかは下請けの判断ではない」

 7月5日、名古屋市熱田区の工事現場で50代の作業員が熱中症とみられる症状で亡くなった。熱中症警戒アラート発表中のコンクリート工事だった。

 現場やそのときの状況、個々別の手法にもよるが、事件のときにされていた作業が生コンクリートを枠の中に流しこむ「打設」と呼ばれる作業だったとしたら、危険とわかっていても強行しなければならない場合が多いというのだ。

「安全配慮義務はわかる。人命が大事なことも承知だ。出来る限りのことはしている。しかし請け負う側は気温が40度だろうと50度だろうと工事をするしかない。それでも請け負わなければみんな食べていけない。エアコンの効いた部屋で仕事をしている人は綺麗事をいくらでも言えるが、それが建設現場の現実だ」

 実際、その「現実」が起きてしまった。いや、死亡事故に至らなくとも熱中症で倒れたり、病院に運ばれたりする事例は珍しくもない。どの仕事にもそれぞれに危険はつきものだが、近年のこの国の夏の暑さはこれまでの常識では通用しなくなっている。

「元請から熱中症対策の指導はある。しかし工期は切り詰められて延ばすことなど考えられていない。発注側からすれば『金を出してるんだから死んでもやれ』が現実だ。では延ばして損失を被るのは誰なんですか、と問われたら何も言えない。どんな仕事も下請けはそういうものだと思うが、結局は国や所轄の問題としか現場は言えない」

 彼は「それにしても暑さが異常だ」とも言った。7月に入り地域によっては連日40度に迫る、時間帯によっては40度超える気温。実際の現場の体感ではそれ以上だろう。

関連記事

トピックス

出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
《セクハラに該当する行為》TOKIO・国分太一、元テレビ局員の年下妻への“裏切り”「調子に乗るなと言ってくれる」存在
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン
歴史学者の河西秀哉氏
【「愛子天皇」の誕生を希望】歴史学者・河西秀哉氏「悠仁さまに代替わりしてから議論しては手遅れだ」 皇位継承の安定を図るには“シンプルな制度”が必要
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
ブラジル訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《クッキーにケーキ、ゼリー菓子を…》佳子さま、ブラジル国内線のエコノミー席に居合わせた乗客が明かした機内での様子
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン