同じフジテレビ系で放送されている『あの子の子ども』(カンテレ公式サイトより)
現代の妊娠・出産・中絶をリアルに
どちらの作品も主人公たちはどこにでもいる普通の大学生や高校生として描かれています。その上で特筆すべきは、避妊、検査、診察、妊娠、中絶など出産にまつわる描写がリアリティたっぷりに描かれていること。
『海のはじまり』では水季が夏に「人工妊娠中絶に対する同意書」への署名を求めるシーンに驚きの声があがっていましたし、『あの子の子ども』では避妊具の破損からアフターピルの処方、妊娠検査薬の使用、産科医の対応などがドキュメンタリーのように描かれました。
また、『海のはじまり』は水季が中絶をやめて出産した一方で、同時期に同じクリニックに通っていた弥生は中絶を選択。その対比を描くことで視聴者に妊娠と出産・中絶を考えさせる作品になっています。『あの子の子ども』も福の妊娠を知った恋人・月島宝(細田佳央太)が、妊娠週の数え方、中絶手術のリミットと費用、出産した場合の想定などをノートにまとめて見せるなど、やはり視聴者に考えさせるようなシーンが目立ちます。
「“学生の妊娠”をテーマに設定し、出産や中絶にかかわるリアルな描写を重ね、視聴者に考えさせる」というプロデュースの背景にあるのは、「学生が夏休みの時期に放送して、同年代の男女に見てもらいたい」という制作サイドの思い。さらに両親・兄弟姉妹・友人など周囲への影響、夢への距離感も丁寧に描くなど、多くの人々に当事者として見てもらうための工夫が見られます。
月・火曜に連続放送することで、両作の登場人物とその言動を比べて見やすいのはもちろん、年齢や世界観の異なる作品だけに「こちらのほうが見やすい」などと少なくとも1作は見てもらいやすいことも“妊娠ドラマリレー”という編成が実現した背景の1つでしょう。
近年「セックスレス」がテーマの作品が増えたことと同じように、繊細なテーマのドラマは「家族と一緒に見づらい」という人も、TVerなどの配信視聴が普及してスマホでこっそり見られるようになりました。以前よりも“学生の妊娠”がテーマの作品を放送しやすくなっているのです。