”14歳の母”を演じた志田未来
「安易な美化や肯定」は禁物
それでも過去を振り返ると、“学生の妊娠”というテーマの作品はこれまで何度かドラマ化されてきました。
主な作品をあげていくと、まず1979年の『3年B組金八先生 第1シリーズ』(TBS系)では中学生の妊娠がメインエピソードとして扱われました。1980年の『愛のA・B・C・D』(日本テレビ系)と2006年の『14歳の母』(日本テレビ系)は、中学生の妊娠そのものがテーマの作品。
さらに2015年の『コウノドリ 第1シリーズ』(TBS系)第5話で中学生の妊娠、2018年の『グッド・ドクター』(フジテレビ系)第2話で女子高生の妊娠、同年の『透明なゆりかご』(NHK総合)第5話などで中学生の妊娠がフィーチャーされました。また、昨夏放送の『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)でも主人公の大学生・仲川有栖(福原遥)が18歳で妊娠。戸惑いながらも出産し、夢もあきらめない姿が描かれました。
制作サイド、ひいては放送局にとって“学生の妊娠”は定期的にドラマ化しておきたいテーマということでしょう。ただ、“学生の妊娠”を扱ったドラマは、「低年齢での妊娠・出産を美化している」「学生の妊娠・出産に対する意識の低さを肯定している」などの批判も集まりやすいため、制作サイドには細心の注意が求められます。
安易に美化せず、肯定せず、具体的かつシビアに描かなければならない。しかし、ドキュメンタリーのようなドラマになると肝心の若者に見てもらいづらくなるだけに、どのようにドラマ性を高めていくのか。どんなキャラクター設定とキャスティングなら見てもらえるのか。制作サイドにとって心理描写と状況描写やキャラクターとキャスティングのバランス感覚が求められる難しいテーマの作品でしょう。
今夏は学生の妊娠だけでなく、シングルの子育てやステップファミリーを扱った作品などもあり、「親子であらためて命について考えられる良質なドラマがそろった」と言っていいかもしれません。
【プロフィール】
木村隆志(きむら・たかし)/コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。