千葉真一の主催するJACで本格的なアクションも学んだ
「多くの仕事を失った」あの事件を乗り越えて
名門一家に受け継がれる芸道を絶やさないため、騎一郎は役者の道に邁進。千葉真一の主催するJACで本格的なアクションを修行し、劇団昴で演劇を学んだが、2013年に覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕され、懲役1年6ヵ月、執行猶予3年の判決を言い渡された。
「あの時は多くの人に迷惑をかけてしまい、仕事も失った。本当にバカなことをしてしまったと反省しています。執行猶予が明けるまでは、生きるのに必死で、ドラマのギャラの数分の1を稼ぐことが、これほど大変なことだと思い知らされました」
いま、禊を済ませた騎一郎のもとには仕事のオファーが次々に舞い込んでいる。
「大晦日が来るたびに、女房と『やっと一年が終わった』、『来年はきっと良いことがある』と励まし合ってきましたが、時代に取り残されているような切ない気持ちを感じていました。ありがたいことに一昨年の夏、プロデューサーから電話がかかってきて、NHKの仕事が決まった時は、女房と泣きながら喜びました」
昨年12月、NHKで放送された「大岡越前スペシャル〜大波乱! 宿命の白洲」で、騎一郎は赤穂浪士の堀部安兵衛を演じた。
「NHKの仕事は一度もやったことがなかったので、現場に行くまでは半信半疑。台本に俺の名前が書いてあるのを見て、女房は『パパ、名前入ってる』と大騒ぎしてましたよ。撮影所の人たちが、こんな俺を歓迎してくれるのかという不安もあったけど、皆さん『お帰りなさい』、『帰ってきたね』と声をかけてくれて涙が出そうになりました」
舞台にも本格的に復帰する。9月11日から、東京・渋谷伝承ホールで公演がはじまる演舞集団UTARIの「時は今 天が下しる 桔梗かな」では明智光秀の家臣、斎藤利三を演じる。
「勝おじちゃんの言葉じゃないけれど、親父の芸の幅広さ、勝おじちゃんのエンターテインメント性、敬愛する千葉真一さんの立ち回り、自分が譲り受けたものを精一杯表現して、公演を盛り立てて行ければと思っています」