政府が備蓄してるコメ[農林水産省提供](時事通信フォト)
「米を分けてあげたいのは山々だが、いつもの利用者の分もあるから新規は受けつけていない。それに値段を言うと電話を切られる。東京がほとんどだ」
田舎はそこまで飢えずに都会が飢えて、都会の人々が高価な着物やら貴金属を持って米(闇米)を売ってもらいに行っていた戦後まもなくみたいな話だが、やはり究極的には地縁、そして自分で自分の食べ物を作れる土地や人は強い。
「値段を言うと『高い』『負けろ』だ。以前の格安スーパーとか激安ネットショップの感覚で米の値段を考えているのだろうか。こちらも偉そうにしているつもりはないが、新規で電話してくる人たちは態度もよくないように思う」
いわゆる格安スーパーの中には5キロ1000円とか、下手をするとそれ以下の値段で売っていた時期もあった。米余りで「米が売れない」「米を食べない」が問題になっていた。それがいまではフリマサイトなどで転売とみられる米の出品が露骨に増えた。
「1年を通して作ってみたが少なかった、というだけだ。自然と共に作るものだから当たり外れはある。ずっと減反政策でただでさえ供給源を絞ってもいた。それでも豊作不作は当たり前の話で、こうなることがあることもみなさん知っていてほしい。それに、こちらの都合かもしれないがいままでが安すぎた。あれでは米農家も減るいっぽうだ」
いまから約30年前の米不足(1993年)はすっかり歴史の彼方になってしまったが主食がない、というのはこうした原始的な人間関係を思い出させるように思う。だからこそ、原始的な危機感と不安もまた襲ってくる。そうして買い急ぎ、デマが横行する。
大手ネットニュース記者はその「危機感と不安」についてこう話す。
「吉村知事の備蓄米放出要請はまたかと思いました。コロナ禍にうがい薬が効くという会見をして買い占めが起きたのに」
8月26日、大阪府の吉村洋文知事はなぜ備蓄米を放出しないのかと政府を批判した。吉村知事、かつてコロナ禍の2020年、ポビドンヨードを含むうがい薬について「うそみたいな本当の話」「うがい薬がコロナに効くのでは」などと会見してしまい、それによってうがい薬の買い占めや転売が横行してしまったのに。今回の備蓄米についての発言も消費者の不安を煽るだけのように思う。