日本のほとんどの繁華街では客引きが禁止されている(picturedesk.com/時事通信フォト)
ちょうどそのとき、警察のようにも、警備員のようにも見える絶妙な青と黄色の制服姿に身を包んだ、数人の体格が良い男性たちが現れた。付近の居酒屋店主によれば、彼らは違法店を見つけて指導をする、都や区の委託を受けたパトロール人員だというが、近隣飲食店の女性店主(60代)は呆れ返ったような表情で吐き捨てる。
「見回りの人たちがやってきて、形だけの指導はしますよ。それで店も、ハイハイと一応、席を片付ける。でも、見回りが立ち去ったらすぐ、席は元通り。客もわかっているのか、見回りが去ればすぐ戻ってくる。あれで取り締まりをやっている、と言われてもね。声をかけただけで、ほぼ何もやっていない」(近隣飲食店の女性店主)
この件について所轄署の警察官は「確かに、路上に席を出すくらい大したことはないと思うかもしれないが」と前置きした上で、こう苦言を呈す。
「コロナの影響もあり、換気の良い外で飲もうとか、夏で暑いから外で飲もうという気持ちはよくわかります。(違法営業が横行する)通りは、確かに車はほとんど通らないし、路上営業自体が客にとって魅力的に見えるかもしれません。しかし、ルールは守らなければならない。ルールがあることを知った上で各店は営業しているはず。そうした店は近隣店舗とトラブルを起こしたり、さらに違法な営業に及ぶ可能性が高いのです。ルールを守らないお店で、果たして美味しいお酒や食事ができるのか。店がルールを守っているから、食中毒などを起こさず、客は安心して飲食できるのです。そのあたりを、市民の皆さんにはよく考えていただきたい」(所轄署の警察官)
問題は違法な露天居酒屋だけにとどまらない。
取り締まりの助っ人に屈強な外国人
筆者も度々記事にしてきた、条例などで禁止されている路上での客引き、すなわち「違法キャッチ」も、コロナ禍を経た今、全国各地の繁華街で大手を振って堂々と、再び活動的になっている。こうした違法キャッチを排除すべく、所管の役所はアナウンスをしたり、民間の警備団体などに委託して、違法キャッチを一掃しようと試みているが効果は限定的、と言えればまだマシで、キャッチは消えるどころか増え続けた。コロナ禍を乗り越え、今こそ荒稼ぎしようと違法キャッチも、そして違法キャッチを使う飲食店も躍起になっているのだ。
そして千葉県の某市では、違法キャッチを取り締まる要員として、ついに屈強な外国人スタッフを雇ったという。市内繁華街の居酒屋店主(40代)が、またしても呆れ返ったようにため息をつく。
「この辺りは特に違法キャッチが多いことで知られています。客も事情を分かっていて”タバコを席で吸わせろ”とか”安くするなら行ってあげる”など無茶な要求をして、違法キャッチと交渉するほどです。コロナ禍明け、街は賑わいを取り戻しましたが、キャッチは前よりも増え、市の委託を受けた警備会社の警備員が、客に声がけするキャッチに向かって注意喚起するんですが、キャッチどころか客すら、警備員を無視する。(取締要員に)外国人を採用したことは驚きでしたが、効果があるのかな、と冷めた目で見ています」(居酒屋店主)