東京・新橋で警視庁愛宕署が行った盛り場対策キャンペーン。周辺を歩きながら、悪質な客引きの撲滅を呼び掛けた(時事通信フォト)
筆者も目撃した取り締まりの助っ人は、筋骨隆々、いかにも強そうな外国人だった。中高年の警備スタッフが、その助っ人を取り囲むように歩いているが、確かに威圧感はある。だが、通りに立つ違法キャッチの若者からは乾いた笑いも聞こえてくる。
「今まではジジイが注意してくるだけだったから、シカトしてましたね。最近、デカい外国人が助っ人で来ていますが、正直、何もできませんよ。今まで俺らに無視されていた中高年のおっさん警備員は、横に強そうなやつ連れてるから威張ってますし(笑)。まあ、俺らからしたら何って感じ。役所関連(の警備)だから、俺らに手出しもできないし、ただ威圧感だけ。注意されたら返事だけして一旦引いて(その場を後にして)、近所のパチンコ屋で便所してタバコ吸って戻ってきますよ」(違法キャッチの若者)
真面目にやってる俺らの客も盗まれる
違法な露天営業にしろ、違法な路上キャッチにしろ、取り締まる側をこれでもかというくらいに強気で「ナメきって」いる。その背景には、違法露天営業やキャッチを使ってまで集客したい、金を稼ぎたいという店側の強い意向が見え隠れする。これも以前リポートしたが、違法キャッチに頼らざるを得ない店はたいてい、酒を炭酸で薄めたり、相場より高額な会計を客に支払わせることで成立している。だから、彼らにとっての「営業」は、違法行為への加担を前提としたものに他ならない。そして彼らは自分たちがやっていることが「違法」であることを知っている。
それでもなお、違法行為から手を引かないのは、彼らが、警察をはじめとした司法当局が、現実には強い権力を行使しないと思っているからだ。「パクられ(逮捕)まではしないはずだ」と確信し、取締要員の目の前で違法な声掛けを続ける。前出の飲食店店主も、怒りを滲ませこう訴える。
「アフターコロナの到来は我々のような人間にとって、期待しかなかった。でも警察は、違法行為を堂々と続ける同業者を見て見ぬふり。キャッチの兄ちゃんも、コロナ前より増えたから、真面目にやってる俺らの客も盗まれる。お巡りさんに泣きついても何もしてくれないし、違法キャッチを利用する居酒屋の外国人従業員は、警察から事情を聞かれても”言葉がわからない”とか”差別になる”ですり抜けると笑っていた。不安ですよ、そりゃ」(近隣飲食店の女性店主)
今起きているこれらの問題は、果たして「大したことがない」と見過ごしてよいことなのか。細かすぎて実際に刑罰がくだることはないような違法行為は、その積み重ねで社会の安定を崩していく。少しくらいなら、この程度ならとルール違反の横行が続くと、大きな法律違反への感覚が麻痺する人たちが必ず出現する。更なる大きな犯罪が起きて、巻き込まれて後悔することになっても、もう遅いのだ。