街中で笑顔で談笑する姿も(2023年)
だが、そうであっても、「80歳受給開始」は年金大減額を意味する。
現行制度では、受給開始を65歳から1か月遅らせるごとに年金額は0.7%割り増しされる。75歳受給は84%増、「80歳受給開始」の制度ができれば126%増になる計算だ。
年金月額は2倍超になるが、よく考えてほしい。80歳から受け取り始めても、男性の平均寿命は81.09歳だ。
65歳受給開始なら平均寿命まで16年以上あるはずが、進次郎氏の言うように80歳受給開始にするとたった1年しか受け取れない。当然、生涯受給総額は激減する。それを百も承知で「80歳も選べるようにした」と胸を張られてはたまったものではない。
進次郎氏は安倍政権時代の2016年に党内で「2020年以降の経済財政構想小委員会」(通称「小泉小委員会」)を立ち上げて年金など社会保障改革案をまとめたが、2017年には「年金を必要としない富裕層に年金返上を求めて子育て財源に充てる制度を考えている」(2017年8月25日付、朝日新聞)と発言している。小泉小委員会の報告書には、〈年金受給開始年齢はより柔軟に選択できるようにする。年金保険料はいつまでも納付できるようにする〉と盛り込んでいる。働き続ける限り、年金保険料を払わせる制度を想定していることがわかる。
そして総裁選の出馬会見ではさらに、「年収の壁を撤廃。働いている方には原則厚生年金が適用されるように制度を見直す」とぶち上げた。低収入のパートなど第3号被保険者や非正規社員からも厚生年金保険料を取るという。国民からすればまさに「年金大改悪」だ。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年10月4日号