学校からわずか200mほど離れた路上で事件が起きた(写真/時事通信フォト)
亡くなったのは、日本人の父と中国人の母を持つ10才の男の子だった。動物とドッジボールが好きな活発な少年で、元気で明るく、素直な性格だったという。
「男児の父は、上海の大学に留学経験があり、同じく上海の大学に通っていた中国人の妻と結婚。現在は貿易関係の仕事をしており、中国政府と太いパイプを持つ、中国専門の商社に勤めるエリート社員だそうです」(深センの駐在員)
無辜の少年が犠牲となった痛ましいこの事件。日本のメディアもこぞって報じたが、中国政府の消極的な広報姿勢もあり、情報は極端に制限されていた。
しかし事件から2日後、中国系メディアが被害者の父親のコメントとして「息子は昆虫が大好きで、小さな生き物を見つける特別な力を持った子でした。最初は現地の食事に適応するのが難しかったが、最近では中国料理を好きになり、日本語と中国語を流ちょうに使いこなしていました。彼が突然私たちのもとを去ったことはまったく予想外で、私の心は混乱と無限の悲しみに満ちています」などと、遺族の胸中を報じた。
父親の悲痛なコメントに共感が集まる一方、逮捕された44才の犯人が、前科二犯のいわく付きの人物だったことも、被害者への同情を深めた。
「警察当局が明らかにしたところによれば、2015年には通信設備を破壊した容疑、2019年にはデマを流布した容疑で、それぞれ拘束されています。現在は無職で、容疑を認めているものの、詳しい動機は明らかにされていません」(前出・中国在住ジャーナリスト)