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「被災地はゴミ捨て場じゃない」という訴えはなぜ届かないのか

仮設住宅も浸水した(写真/時事通信)

仮設住宅も浸水した(時事通信フォト)

 助けを必要としている被災地をめぐって、騒動が起きている。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *

 話が通じない相手というのは、どんなに丁寧に話しても通じないんだなと感じさせられる光景が、またまた繰り広げられています。

 元日に大地震に見舞われた能登半島が、先日は大雨で甚大な被害を受けてしまいました。あまりにもやるせなくて胸が締め付けられます。被災した方々におかれましては、心からお見舞い申し上げます。地震からの復旧もまだこれからという状況で、さらに豪雨が追い打ちをかけ、多くの地域で生活インフラがズタズタになってしまいました。

 現地にはボランティアの人たちも入って、各地で支援活動が行なわれています。9月25日の午後、X(旧twitter)にボランティアとして活動している人のひとりが、怒りの気持ちと呆れた気持ちを漂わせた投稿をしました(投稿者にご迷惑をかけるといけないので、ユーザー名やアカウントは書かないことにします)。

 賞味期限が数日後に切れる水が大量に送られてきたという内容で、写真には500ml入りのペットボトル24本入りの段ボール箱が大量に積み上げられています。投稿主はあえてぼかしていますが、量の多さといい箱に「保存水」と書かれていることといい、おそらくどこかの自治体が送ってきたのでしょう。

 この投稿とその後の投稿によると、責任者と相談した結果、被災者のみなさんには渡せないという判断になったとのこと。もちろん、飲んでも何の問題もないことは百も二百も承知の上。なぜ渡せないか、その後の投稿で詳しく説明してくれています。それを読むと「そりゃそうだな」と納得せずにはいられません。

 ほかにも日本中から賞味期限に余裕がある水がたくさん寄せられていたおかげで、この水は配らずに済んだとか。そして「事情を理解してくれた方」が引き取ってくれたそうです。よかったよかった……とはならないのが、ネットやSNSの厄介なところです。

納得できる理由を説明しているのに大量のクソリプが

 最初の投稿に書かれていた「被災地はゴミ捨て場じゃないです」というフレーズが刺激が強かったのでしょうか、話が通じない相手から、山のような「クソリプ」が押し寄せました。しかも、わざわざ〈※「賞味期限は消費期限と違って~」みたいな的外れなリプは不要です〉とも書いているのに、その手のリプをしてくる人の多いこと多いこと。

 賞味期限が切れそうな(渡すタイミングによっては切れている)水を渡そうと思ったら、列に並んで水を取りに来てくれた被災者のみなさんに、賞味期限と消費期限の違いを詳しく説明する必要があります。忙しい職員やボランティアとしては、そこに貴重な時間や手間をかける余裕はありません。しかも、どんなに丁寧に説明してもクレームが入る可能性はあります。その対応にまた労力を割かなければなりません。

 そもそも、自分の友人や知人に賞味期限が切れそうなものをあげるでしょうか。友人知人にあげられないものを被災地に送ってくるのは、被災者を一段下に見ているからです。「困っているんだったらありがたく飲め」と超上から目線で言っているも同然であり、打ちひしがれている被災者にとっては、無神経で残酷な所業と言えるでしょう。

 しかも、賞味期限切れの保存水は、ほとんどの自治体では破棄されるか、説明した上でこっそり職員に配られるかで、要するに「ゴミ」です。地元の市民にも渡さないようなものを被災地に送るのはおかしいんじゃないでしょうか。

「なぜ渡せないか」についての投稿主の説明をベースに、私の解釈も加えました。ほかの投稿でも、具体例を挙げながら重ねて伝えてくれています。「被災地で被災者に理解や説明が必要になる物資は、千羽鶴と大差ないありがた迷惑です」とも。たしかにそうですよね。

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