デビュー直後から人気を博したウッチャンナンチャン(1989年、「ウッチャンナンチャン上京7周年記念特別番組」の収録時)
芝居のセンスで勝負
1985年にプロデビューを果たしたウンナンは、センス溢れる斬新なコントで瞬く間に若者のハートをつかんだ。そして、数年後には「西のダウンタウン、東のウンナン」と称されるほどの人気者となる。
コンビの頭脳である内村はこれまでいくつもの冠番組を持ち、自らネタを披露するだけでなく、他の芸人をプロデュースする役割も果たした。また、時に映画監督としてメガホンを取り、2017年から2020年にかけては紅白歌合戦の総合司会も務めた。お笑いタレントとしてひとつの頂に立ったと言っていいだろう。
だが、並び称されるダウンタウンがいかにも芸人らしい数々の豪快な伝説をもって語られるのに対し、内村に関するその類いの逸話は実に地味で控え目だ。
バラエティー番組の金字塔『笑っていいとも!』を立ち上げたディレクターとして知られる放送作家の永峰明は『冗談画報』や『笑いの殿堂』などのネタ番組でウンナンの新たな魅力を掘り起こした。その永峰は内村の特異性をこう話す。
「内村は人間的にはごく普通なんで。芸人というより、芝居系の人なんですよ。酒もそんなに好きじゃないけど、そういう場で仕事の話をするのは好き。南原は有名になって女にモテたいみたいのもあったと思うんですけど内村はそれもない。何よりも芝居を、コントを作りたい人なんです。だから、飲みに行くのでもそういう系の店には行ったことがないですね」
そういう系とは、つまり女の子がいる店のことだ。永峰が続ける。
「笑組は浅草芸人の流れを汲んでいますけど、この頃、東京のお笑いの世界でそうじゃない人たちが出始めた。それが内村みたいな演劇系の人たちだったんです。出川(哲朗)らと『劇団SHA・LA・LA』もやっていましたしね。芸人のセンスじゃなくて、芝居のセンスで勝負する人たち。芸人は素がベースだけど、芝居系の人たちは演技がベースにある」