内村とピンクの電話はもう20年以上、会っていないそう(撮影/山口京和)
2人も、もともとは役者志望だったという。竹内が思い出す。
「うちの事務所の石井光三社長に『あんたらな、一生懸命芝居をやってもひとつセリフをもらうのに10年かかるで。でもコントで売れたら、6分間は主役をできるんや』と言われて。そうかと思ったんです。その頃のテレビのネタ時間は6分だったんで。けど、ウンナンさんが売れ出してからはどんどん短くなって、3分とか1分になっていった。みんなショートコントをやっていましたね」
清水はショートコントの強みをこう説明する。
「長いネタだと笑わせるまでに時間がかかるんです。でもショートだと、すぐに笑いが来る。お客さんも、ずっと笑っていられるじゃないですか。だから、おいしかったんだと思います」
ちなみに2人の内村の印象は笑組とはずいぶんと異なる。竹内は言う。
「内村さんは人混みの中でも誰にも気づかれないそうです。昔から『おれはオーラ消しが得意なんだ』と話していて。売れてくると、どうしてもオーラが出てくるものじゃないですか。でも、それを消せるそうです」
清水の中の内村も庶民派だ。
「偉ぶった感じのまったくない方でしたよ。コンビニが大好きで、たこ焼きとかおにぎりを買って食べるのがお好きでした。コンビニのネタもたくさんありますもんね。私は南原さんの方がメイク室とかで一緒になると、ちょっと緊張しちゃう感じがありました」
内村はネタに関しては求道者的なイメージもあるが、こんな一面もあったという。清水の証言だ。
「みんな行き詰まって、夜中に『どうする?』みたいになってくると、内村さんがスパッと『ダメ、ダメ。これ以上考えてもいいアイディアは浮かばないから。解散!』って。で、次の日、ちゃんとでき上がるんです」
内村とピンクの電話はもう20年以上、会っていないそうだ。清水がポツリとこぼす。
「一緒にやっていた頃は仲間っていう感じでしたけど、今はすごい遠いところに行っちゃった人みたいな……。今、ここに内村さんが現われたら緊張しちゃうかな」
内村は「東の」ではなく「日本の」になった。
【プロフィール】
中村 計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。ノンフィクションライター。著書に『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』『笑い神 M-1、その純情と狂気』など。スポーツからお笑いまで幅広い取材を行なう。近著に『落語の人、春風亭一之輔』と、共著『高校野球と人権』。
※週刊ポスト2024年10月11日号