両手にトロフィー。ブラックスーツを着こなす真田(写真/AFLO)
──パッと袖の長さに気づく真田さんもさすがですね。
彼も20代からずうっと時代劇をやってますからね。
──ただ、ハリウッドのスタッフは厳しい分業制と聞いています。そうやって俳優たちにもアドバイスを出すことに問題はありませんでしたか?
向こうは他の部署の人間が口出ししたらいけないんですが、僕らなんかはいいみたいでした。「気がついたら言ってほしい」と真田さんにも言われていたので、どんどん口出ししましたよ。
──やはり、それだけ真田さんに信頼されていたんですね。
僕が来る前に、真田さんがエグゼクティブプロデューサーに「日本からすごいやつを呼んだ」みたいなことを言っていたようですよ。
──となりますと、ハリウッドのスタッフたちも最初から古賀さんに一目置いていた感じだったのでしょうか。
最初はそうでもなかったと思います。真田さんがハードルを上げるだけ上げてから僕みたいなのが来たから、「なんなんだ、この人は」と思われたんじゃないですかね。
それが変わったのが、浅野忠信さんの着付けをした時でした。あの人が縛帯(ばくたい)をつけるところがあって、現地のスタッフが脱がして、その縛帯をつけて着せようとしていたのですが、とにかく時間がかかる。そこで僕が代わって着付けをしたら、すぐに終わったんです。それから対応が変わり、「ミスター・コガ」と呼ばれるようになりました。
──東映京都で培った技術がモノをいいましたね。
こっちでは一人の着付けにそんなモタモタしていたら、怒られますから。
──京都では当たり前のことでも、ハリウッドの皆さんには神業に見えたかもしれません。
衣装デザイナーのカルロス・ロザリオさんが僕の着付けを見たいと事務所から車で来たことがあったのですが、僕が早すぎて彼が着いた時にはもう終わってました。
──着付けのチェックだけでなく、実際にやられてもいたんですね。
そうですね。「わからなかったら古賀を呼べ」みたいになっていました。他にも、人が出てない場面で連絡が入ったことがありました。マンモススタジオ内に設けてもらった、僕の事務所にね。「すぐ来てくれ」と言うんです。「あれっ? 人が出てないのに、何で俺に用事があるのかな」と思ったら、飾りで置かれている鎧ですよ。その紐が解けてしまったので、それを直してほしいと。
──たしかに、その結び方もいい加減にはできませんからね。
そうなんです。ちゃんとやり方があるから。
──撮影時以外で、カナダで真田さんと関わることはありましたか?
僕のホテルの部屋にハロウィンのお化けのグッズが置いてあったんです。これが怖くて、びっくりしたの。それで、知り合いは他に誰もいないから真田さんに連絡したんですよ。「ちょっとホテルにハロウィンの飾りが置いてあるけど、どうしたらいい?」って。そしたら、真田さんが「フロントに言ったらいいよ」と言うんです。でも、僕は英語ができないですから。で、1週間後に英語ができるやつを真田さんが連れてきて、一緒にフロントに返しました。僕が入る前の宿泊者にあてたプレゼントやったみたいです。
──唯一の知り合いが真田さんというのが、また凄い。
でも、あとから考えたら、主演兼プロデューサーにこんなしょうもないことを……。