2022年の中国における交通事故による死亡者数は6万676人。遼寧省瀋陽市にある交通安全を学ぶ施設で実際の交通事故車両展示を前に解説を受ける学生たち(NurPhoto via AFP)
運転手として雇ってくれという中国人はいる
埼玉西部の運送会社社長は「最近とくに増えた」としてこう明かす。
「運転手として雇ってくれという中国人はいる。あとはパキスタンとかクルドとか。うちは断っているが運転手の足りない運送会社やモグリは雇うだろうね。実際、運転手が足りないのは事実だから」
パキスタンもジュネーブ条約に加盟していない。クルドは国を持たないためそのパキスタンも含めた周辺国ということになるがイラン、イラクも加盟していない。トルコやシリアで取得した場合はジュネーブ条約加盟国なので有効だ。もちろん日本に住み、日本の運転免許を正規に取得した人も問題ない。
しかしそうした問題ばかりが理由ではない、とも語る。
「国際免許が切れていても平気で『運転できる』と来る。在留資格すらあやしいのも来る。そんな運転手を雇ったらうちが大変なことになる。差別しているつもりはない。こっちも仕事だし、人の命にかかわることだ」
国際免許の期限は発給から1年以内か上陸1年以内のうちの短い期間で有効となる。それを過ぎると更新制度もないため「無免許」状態になる。全部がそうではないが、そうした事件(後述)がたびたび報じられている。任意保険の問題もある。2011年の名古屋市で起きたブラジル人男性による無免許ひき逃げ事故は出所後に事故加害者が母国へ帰ってしまい、遺族は泣き寝入り状態となってしまった(ブラジルはジュネーブ条約非加盟国)。
日本は政府主導で商業ドライバー不足解決と海外旅行者のインバウンド需要喚起のため、外国人が日本で運転する際の運転免許の外免切替や取得手段を簡素化、多言語化などによって平易にしてきた。公道を外国人観光客のカートが走り回り、外国人の運転する貨物が増えたのもそうした政策によるものだが、それが「お人好し」と一部の国や地域の外国人から利用されている実態がある。10月には日本で有効でない免許を持つ外国人客に公道でカートを運転させたとして都内のレンタルカート業者が摘発された。
別の都内運送会社役員は「それでも必要」と電話口でこう話す。
「ドライバーが本当に足りない。うちだけじゃない。これから少子化もあるし、ある程度は仕方ないとみな思っているはずだ。むしろ日本の免許制度が厳しすぎるように思う」