日本で普通に運転免許を取得するには時間もお金もかかる(写真提供/イメージマート)

日本で普通に運転免許を取得するには時間もお金もかかる(写真提供/イメージマート)

 条約とそうした事情の直接的な関係はないにせよ、日本の運転免許取得は世界でも非常に厳しい試験であることは確か。正直、中国出身の彼の言う通り「簡単というかいい加減」な国は少なくない。

「だから中国の人たちからしたらびっくりするくらい、日本で国際免許に切り替えられるというのは『お得』なんです。だから殺到する。彼らの言う通り優しいというか、お人好しかもしれません」

 その「お人好し」の証拠に彼ら中国人たちが日本の免許試験場で受ける学科試験は10問中7問正解で合格、それも2択である。あくまで確認のための平易な質問で、まあ受からせるための試験、と言ってもいいだろう。

 私たちのイメージする試験、引っ掛けだらけの仮免学科試験50問中45問以上、本免学科試験95問100点満点中90点以上が求められる学科試験どころか、いわゆる原付免許の50点満点48問のみに比べてもびっくりするほど少ない。

 筆記と比べて実技はどうか。改めて運転免許試験場、合格した中国人に話を聞いた。

「簡単でした。車を操作できるかの確認みたいなものでした。これで自転車使わずに済む、嬉しい」

 彼は今年来たばかりの留学生、普段は自転車で移動だったが取得後は日本でドライブを楽しみたいそうだ。

 それにしても、国際免許への切り替えと日本国内で取得する正規の(便宜上使う)運転免許の違いはあるにせよ日本の道路を走ることは同じ、まして日本で教習所を経ない試験場のいわゆる「一発試験」は四輪も二輪も狭き門だ。このような教習所で大金を払って長時間の講習や授業を経た人、試験場の実技で何度も落ちながら取得した人からすれば納得できないのではないか。

 中国の旅行パンフレットには以前から免許切り替えツアー的なものもある。中国はコロナ禍以前から日本の手厚い国民健康保険制度を目的に来日して受診する「医療タダ乗りツアー」が問題になったが、それと同様に「商品」としてパッケージ化されている。

 中国人が得するから、という話ではない。中国の運転免許は多くの国で認められにくく厳しい基準で審査されているのに、日本だけがこうした緩い審査でジュネーブ条約の国際免許への切り替え(外免切替)を認めると、どういうことになるか。

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