国内

「クマにお歌を教えてあげたよ」秋田県で人身被害が拡大…背景にあった獣と共存してきた山間集落の消滅

秋田県ではクマの出没について注意喚起している(同県HPより)

秋田県ではクマの出没について注意喚起している(同県HPより)

 12月2日、秋田市のスーパーマーケットで足かけ3日間居座ったクマがついに捕獲された。現場のスーパーは秋田駅から約8キロの市街地にあり、同エリアには住宅が密集する。今年は山の実りが良いという指摘もあっただけに近隣住民からは「まさかこんなところに出るなんて」と驚きの声が広がっている。

 環境省の調査によると、秋田県は昨年度、クマに襲われてけがをした人が70人にのぼり、47都道府県で最も多かった。クマが捕獲された2日には市内の図書館でも別のクマが目撃されており、安心できる状況とは言いがたい。なぜ秋田県で人身被害が集中するのか。

「人身被害が増えたのは、クマの生息エリアの拡大が一つの原因だと見ている。クマの生息エリアが拡大しているのは県内の人口が減った農村地区。いわゆる廃墟や廃村によるもので、かつて人間とクマの居住エリアの棲み分けが出来ていた場所が、集落の消滅などによってクマが出没するエリアが拡大したのです」

 こう語るのは秋田県内の廃墟や廃村の現状を発信するウェブサイト「全自動さじなげ委員会」の主宰者だ。人口減や財源不足によって行政の手が回らない場所、いわゆる「さじがなげられた場所」という意味で、同サイトは名付けられた(以下、「」内は主宰者)。

 思い返してみれば今年5月には、秋田県鹿角市の山林でタケノコ採りに訪れていた60代男性が遭難し、その後遺体で発見された事件があった。捜索に向かった警官2名が男性の遺体そばでクマに襲われ、負傷。その後、搬送された遺体には大型動物によるかみ傷、爪で引っかかれたような傷があり、衣服には動物の黒い毛が付着していた(鑑定の結果、クマの毛と断定出来ず、人身被害件数には計上せず)。

 鹿角市といえば8年前にも「スーパーK」と名付けられたツキノワグマが、4人を襲って食べたとされる未曾有の人身被害があった場所でもある。

「(5月に)遺体が発見された鹿角市の山林は、昔は近くに集落があって、遺体が発見された場所はその集落の畑だった場所です。集落から人が消えて畑が耕作放棄地となると、人の出入りが途絶えるのでクマやイノシシといった獣の生息区域となる。クマの餌がある生息区域に入ったので敵とみなして襲ったのではないでしょうか」

関連記事

トピックス

薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト