芸能

清水美砂が明かす映画『海の沈黙』秘話 全身刺青女役で挑んだ“濃厚な大人の映画”「倉本聰先生はどこかで私の人生をなぞってくださったんだと思いました」

19年ぶりに倉本作品に出演する清水美砂

19年ぶりに倉本作品に出演する清水美砂

 元日に90歳、卒寿を迎える倉本聰氏。同氏が手掛けた映画『海の沈黙』に出演した俳優・清水美砂が、とっておきのエピソードを明かす(文中敬称略)。

 倉本が構想に60年を費やした映画『海の沈黙』。

「台本をいただいたとき、これはもう濃厚な大人の映画になると思いました」

 そう語るのは、同作で“全身刺青”の小料理屋の女将・牡丹を演じた清水美砂だ。16歳で映画デビューした清水が本気で女優を目指すきっかけとなったのが、倉本が描いた映画『駅 STATION』(1981年公開)だという。

「劇中でいしだあゆみさんが高倉健さんと別れるシーンを見て、『こんな演技のできる女優さんになりたい』『こういう映画に出たい』と思ったんです。この作品が脳裏に焼き付いて離れませんでした。ですから、今回は構想60年の大作と聞いて、絶対に出たい、と台本も読まずに即答しました」

 今作の牡丹の刺青は、圧倒的な才能を持ちながら画壇から抹消された主人公・津山竜次(本木雅弘)が施したもの。津山を慕う女性たちとの関係性や、美術の才能に対する男の嫉妬が描かれる。

「田村安奈(小泉今日子)やあざみ(菅野恵)といった女たちの、竜次に対する愛情や関わりがよく写し出されていた。言葉だけではない、大人にしかわからない感覚がギュッと詰まっている物語でした。観る人に“あなたはどう解釈するか”と問いかけてくる映画でもあったと思います」

 清水が倉本作品に出演するのはドラマ『優しい時間』(フジテレビ系)以来、19年ぶりとなる。

「前回ご一緒したときにみんなで飲む機会があり、先生が『飲み屋の女性は明るく元気だけど陰がある』とお話しされて。今回の牡丹の役はそれに近いと私は思っていました。どこまでその陰影が深く表現できたかはわからないのですが、私の母が水商売をしていたこともあり、先生はどこかで私の人生をなぞってくださったんだと思いましたね」

【プロフィール】
清水美砂(しみず・みさ)/1970年9月25日生まれ、東京都出身。1987年に芸能界デビュー。1989年にはNHK連続テレビ小説『青春家族』でヒロインを演じて話題となり、日本アカデミー賞優秀主演女優賞など数々の賞を受賞。

取材・文/一志治夫

※週刊ポスト2025年1月3・10日号

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン