国際情報

《アメリカ大統領選が10倍面白くなる》得票数で負けても勝てる“不合理システム”はなぜ生まれたのか 「ハリスが勝ったらテキサス州は独立する」という噂が流れたワケ

大統領正式就任が20日に迫ったトランプ氏(時事通信フォト)

大統領就任が20日に迫ったトランプ氏(時事通信フォト)

「地上最高の権利者を選ぶ戦い」と称しても過言ではないアメリカ大統領選。そのシステムは日本の選挙とは大きく異なり、有権者は「大統領候補」ではなく「選挙人」に投票している。いったいなぜ、そんなまどろっこしい制度になったのか。そこにはアメリカが培ってきた“歴史”が大きく影響している−—いまさら聞けない常識から、知っていれば“通ぶれる”ネタなどをわかりやすく解説する『ビッグコミックオリジナル』で好評連載中のジャーナリスト小川寛大氏による『アメリカ大統領選を10倍面白く読む!』を公開する。
* * *
 共和党ドナルド・トランプ候補の勝利に終わった2024年のアメリカ大統領選挙の結果について、その数字データを少し詳しく見てみたい。

 米大統領選挙とは、実は全米50州に割り当てられた「選挙人」を選ぶ選挙で、有権者は大統領候補それ自体を選んでいるわけではない。このうち、メイン州とネブラスカ州だけが、州内の投票で各党派が獲得した票の割合に沿って選挙人を党派別に割り当てるのだが、残りの48州では最多得票を得た党派が、その州に割り当てられた選挙人枠を独占してしまう。つまり逆に言えば、その48州の選挙結果を見ることで、「その州で共和党と民主党、どちらが勝ったのか」がはっきりとわかるわけだ。

 それに沿って集計してみると、今回の選挙でトランプが勝った州は30。一方、民主党のカマラ・ハリス候補が勝った州は18だった。これだけを見ると「トランプの圧勝」にも見えるが、実際に有権者が共和党、民主党双方に入れた票の実数で見ると、トランプの獲得票数が約7667万、ハリスの獲得票数が約7410万となっていて、かなりの接戦だ。

 なぜこのような差が生まれるのかというと、それこそ選挙人制度に原因があるのだ。よく報道されているように、民主党はカリフォルニア州やニューヨーク州、またシカゴを擁するイリノイ州など、リベラル勢力の強い都市部で圧倒的な人気を誇る。実際にこれらの3州では、今回もハリスが勝利している。一方、共和党が強いのは基本的に“田舎”の州だ。

 選挙人は人口規模の多い州に多くの枠が割り当てられ、少ない州にはちょっとしか割り当てられない。ゆえにハリスは、勝利した州の数でこそかなりトランプに差を付けられたが、大都市圏を押さえているがゆえに、獲得票数の実数では接戦を演じることができたわけだ。

 今回のトランプは、勝利した州の数でも、獲得票数の実数でもハリスを上回っている。しかし、実は2016年の大統領選でトランプが勝利した際は、その獲得票数は約6298万票で、敗北したヒラリー・クリントン(民主党)の約6585万票を下回っていた。それでも当選できてしまうのが選挙人制度というシステムで、つまり「全米でたくさんの票を集めた=たくさんの選挙人枠を獲得した」ということは必ずしも成り立たないので、2016年のトランプは勝てたわけだ。なお、2000年の大統領選で当選したジョージ・W・ブッシュや、1824年の大統領選で当選したジョン・クインジー・アダムズらも、獲得票数の実数でライバル候補に負けているのに、選挙それ自体では勝てた人々である。

関連記事

トピックス

訃報が報じられた日テレの菅谷大介アナウンサー
「同僚の体調を気にしてシフトを組んでいた…」日テレ・菅谷大介アナが急死、直近で会話した局関係者が語る仲間への優しい”気遣い”
NEWSポストセブン
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン