ライフ

【新刊】新作句ともに30年の句歴を振り返る、川上弘美氏の第二句集『王将の前で待つてて』など4冊

前半は2010年からの新作句、後半は1年1句の自選で俳句歴30年を辿る

前半は2010年からの新作句、後半は1年1句の自選で俳句歴30年を辿る

 お正月が過ぎても、まだまだ寒いこの季節。暖かな部屋の中で読書をしてみるのもいいのでは? おすすめの新刊4冊を紹介する。

『王将の前で待つてて』川上弘美/集英社/2145円

 俳句を始めて30年、2010年の『機嫌のいい犬』に続く第二句集だ。俳句は詩の一形態。詩人川上弘美さんの特徴は生きモノや食べモノをよく詠むことで、(勝手に)ザトウクヂラ、蛇、出汁と揚げ玉、昼酒などと書き出しながら読んでいたら長いリストになった。題名は「王将の前で待つててななかまど」から。「夕蛾とぶ百円棚に金枝篇」が町の小さな古本屋さんの妖しさ満載で好き。

超ワガママ男子など、やんごとなき方々が繰り広げる一夫一妻制の悲喜劇

超ワガママ男子など、やんごとなき方々が繰り広げる一夫一妻制の悲喜劇

『皇后は闘うことにした』林真理子/文藝春秋/1870円

 著者によれば、梨本宮伊都子妃が娘の縁談に奔走する『李王家の縁談』のスピンオフ作。家格を重んじる皇族や華族の5編の結婚狂騒曲で、いまいましさ(男性)や口惜しさ(女性)が交錯、大日本帝国の裏面史のよう。高円寺の農家で育った皇太子妃(節子、後の貞明皇后)の健やかさ、貞明皇后の秘蔵っ子秩父宮に嫁いだ勢津子妃の魅力など、皇室のトリビアは思った以上に奥深い。

バブル期、老い本は沈静化していたという鋭い指摘も

バブル期、老い本は沈静化していたという鋭い指摘も

『老いを読む 老いを書く』酒井順子/講談社現代新書/1056円

 出版不況の今なぜか“老い本”だけは元気。日本独特の現象とか。そこでおさらいしてみました、書物に見る老いの精神史。古典『方丈記』、戦後のベストセラー『楢山節考』や『恍惚の人』、佐藤愛子や黒柳徹子など老い界の星=老いスターにも触れる。現在世界の超金持ち達の一大テーマは不老不死(マジか!?)。その点日本人は老いと向き合おうとしている。ずっと健全だと思う。

読売文学賞の随筆・紀行賞を受賞。自伝的エッセイ、待望の文庫化

読売文学賞の随筆・紀行賞を受賞。自伝的エッセイ、待望の文庫化

『父のビスコ』平松洋子/小学館文庫/803円

“父の娘”ものかなと思ったら射程はもっと広く、自分の感受性の土壌を掘るかのような随筆だった。具体的に言うと故郷倉敷の風土であり、祖父母や両親など家族の系統樹から滴った時間だ。「ちらし寿司やマカロニグラタンやすき焼き」など「食べ物が、家を動かしていた」。介護施設に持参した鰻重を父上が「柔らかい宝石を食べているようだ」と感激されたのが胸に染みる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年1月30日号

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン