ライフ

「赤いきつね」のCMを性的だと非難する人を気の毒と感じる理由

YouTube『maruchanchannel』より

YouTube『maruchanchannel』より

 世論を読み解くのが難しい時代だ。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 いつもお疲れさまというか、精が出ますねというか……。ネット上で何度も見たことがある光景が、またまた繰り広げられています。

 今回、標的にされているのは、東洋水産が2月6日に公開した〈赤いきつね 緑のたぬきウェブCM 「ひとりのよると赤緑」 おうちドラマ編〉。若い女性が部屋でテレビを見ながら、赤いきつねを食べるという内容です。その様子がじつに美味しそうで、夜中に見るとカップ麺にお湯を注がずにいられません。

 あたたかい目線で日常の一コマを描いたこのCMが、一部の方々に「性的でケシカラン」という批判を浴びてしまいました。うどんを食べている描写に問題視するほどのエロを感じるのは、かなりの力技です。さすがに今回は、「性的だ」という批判の声をけ散らす勢いで、「どこが性的なんだ」「ぜんぜん問題ないだろ」と反論する声が大量に上がりました。東洋水産も、今のところ沈黙を貫いています。じつにアッパレで賢明な対応です。

あのCMを目を吊り上げて批判する人たち

 もちろん、CMをどう感じるかや描写の好き嫌いは個人の自由です。しかし、SNSで「このCMがいかに不快か」「いかに問題か」を熱く語っている人を見ると、この人たちは何のために、何を求めて目を吊り上げているのだろうと不思議でなりません。大きなお世話ですが「気の毒だなあ」と感じてしまいます。

 当人たちにしてみれば、鼻高々な気持ちこそあれ、気の毒にという視線を向けられるなんて思いもよらないことでしょう。なぜ気の毒と感じるのか、理由を考えてみました。

●その1「気に食わない対象を攻撃するためにもっともらしい理屈を付けてしまう」

 ジェンダーがらみの不平等を糾弾することが「絶対的正義」になっている昨今、気に食わない対象をその手の理屈で攻撃すれば、たちまち「正しい側」になれます。しかし、それを繰り返していたら、ステレオタイプなレッテル貼りの気持ちよさが癖になって、「本当に批判する必要があるのか」と立ち止まって考えたり、「自分の言っていることはどこかヘンじゃないのか」と謙虚に己を省みることが苦手になるでしょう。気の毒なことです。

●その2「たまたま話題になっている標的を何も考えずに攻撃してしまう」

 このCMは、そもそもウェブ上でしか流れていません。話題にならなければ、熱心に非難している人の99%は、目にする機会はなかったでしょう。しかし、誰かが「これは問題だ!(=攻撃する理屈を見つけやすそうだ)」と取り上げたおかげで、尻馬に乗って騒ぐことができました。世にあふれるコンテンツの中で、あえてこれを非難する意味や必然性なんて考える必要はありません。無自覚のまま踊らされていて、じつに気の毒です。

YouTube『maruchanchannel』より

YouTube『maruchanchannel』より

●その3「殴り返してこない相手を選んで吠える気持ちよさに溺れてしまう」

 大企業に向かってSNSでどれだけ吠えまくっても、反撃される心配はありません。ノーリスクで「言ってやった」という満足感や達成感だけを味わえます。その快感が癖になって、たとえば我が子の担任や学校に理不尽なクレームを付けるモンスターな親になったり、飲食店やスーパーで店員を怒鳴り散らしているモンスターな客になったりしてしまわないでしょうか。歪んだ気持ちよさに溺れて、もしそうなってしまったらとても気の毒です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン