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《中山美穂さんの特別な輝き》アイドル評論家・中森明夫氏は「二度と出てこない“最後のアイドル”だった」と回顧

1988年12月31日、『第39回NHK紅白歌合戦』に初出場。紅組1番手で『Witches』を歌唱(C)女性セブン

1988年12月31日、『第39回NHK紅白歌合戦』に初出場。紅組1番手で『Witches』を歌唱(C)女性セブン

 4月22日にお別れの会が開かれ、その早すぎる死を日本中が悼んだ中山美穂さん(享年54)。社会現象となった彼女の唯一無二の輝きを、アイドル評論家・中森明夫氏が振り返る。

 * * *
 中山美穂さんは圧倒的な光で日本の各時代を照らす特別な存在でした。これから二度と出てこない“最後のアイドル”だったと痛切に感じます。

 中山さんは1985年1月、14歳でテレビドラマ『毎度おさわがせします』(TBS系)で俳優デビューし、鮮烈な役を演じてとてつもない評判を呼びます。同年6月には作詞・松本隆、作曲・筒美京平の黄金コンビのシングル曲『「C」』で歌手デビューしました。

 実はその発売前後、僕は朝の情報番組『おはようスタジオ』(テレビ東京)で、彼女の生歌唱をそばで目撃しています。僕は当時25歳で新人アイドルと対談するコーナーを担当していて、15歳の彼女がゲストでした。間近で見て歌を聞くと、彼女は大人っぽくて、ハッとするほど綺麗でした。

 1985年当時、フジテレビ系のバラエティ番組『夕やけニャンニャン』から誕生した女性アイドルグループ「おニャン子クラブ」が『セーラー服を脱がさないで』で大ブレイクしていました。端的に言うと彼女たちは「クラスにいそうな放課後の女子高生」。誰でもアイドルになれるということを体現した存在だった。それに対し、同年にデビューした中山さんは「あんな子はどこにもいない」という対照的かつ特別な存在でした。結果的に、「おニャン子クラブ」の大集団に1人で立ち向かった中山さんが、この年の日本レコード大賞最優秀新人賞を最年少で獲得しました。時代が彼女を求めたのです。

 俳優としても1980年代、1990年代、2000年代それぞれの時代で活躍し、演技も変化を遂げていきました。10代半ばで映画「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズ(1985年、1986年)やドラマ『セーラー服反逆同盟』(1986~1987年、日本テレビ系)などで女子高生を演じ、当時の10代の若者の間で圧倒的な人気を集めました。1987年のドラマ『ママはアイドル!』(TBS系)では「中山美穂」役でアイドルを演じ、「ミポリン」というニックネームはこのドラマの中で生まれて浸透していきました。

元気だった頃の日本を象徴する存在

 トップアイドルとしての地位を揺るぎないものにしていた彼女は、日本経済がバブル期に突入する頃と軌を一にするように、自身も10代後半から20代にかけて大人の女性に脱皮し、トレンディドラマにも出演するようになります。化粧品のCMに出ればその商品が大ヒットし、メイクを真似たOLさんが大量発生して社会現象にまでなりました。あの時代の彼女の特別な輝きは、唯一無二のものでした。日本が経済的に元気だった時代を象徴する存在だったと思います。

 1990年代は映画『Love Letter』(1995年)で新境地を開きました。奇しくも1995年は阪神大震災、地下鉄サリン事件で多くの方が亡くなった年でした。世の中の基盤が崩れたような時代に、中山さんはこの映画で非常にしっとりした演技を見せ、喪失から再生というテーマを見事に演じました。

 彼女の60代、70代、80代の演技を観たかった。歌も聞きたかった。これからだったのに残念です。

取材・文/上田千春

※週刊ポスト2025年5月9・16日号

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