20年前、帰宅すると家の中が空っぽに
「姿を消した家族」に思うこと
2005年2月のある日、仕事から帰ると家の中が空っぽになっていたという。
「自由が丘の3LDKと2LDKの2戸を借りて暮らしていました。その日、家に帰ると妙に静かなんです。6人家族ですから、いつもなら玄関に6人分の靴が置かれているのに、靴もない。『あれ?』と思って靴箱に目をやっても空っぽ。驚いてリビングに行ったら、冷蔵庫もテレビも電子レンジもソファーもなくガラン……。空っぽの段ボール箱が3つ転がっているだけでした」
よく見ると、離婚届と「あとから住所を知らせるので、この離婚届にサインして送ってください」と書かれた夫人の手紙が残されていた。
「エアコンも、僕が普段使っていた羽毛布団も、持って行っていました。あの日は残されていた薄い布団にくるまって寝ようとしましたが、寒くて眠れませんでした」
ポケットにたまたま入っていた183円だけが残された。転居の予兆はなかったのだろうか。
「そういえば、家族が家を出ていく1週間前、『冷蔵庫や洗濯機を買い換える』と言われ家電量販店に連れていかれてドッサリ買ったんです。そのとき家で使っていたのを下取りに出して、新しく買った家電製品を引っ越し先に持って行ったんでしょうね」
それからは独身。1人暮らしを貫き、部屋は1DKに引っ越した。大動脈解離で倒れたときも1人だったため、助かったのは何とも幸運だったのだ。