藤井聡太の快進撃はまだまだ続きそうだ(写真/共同通信社)
しかし意外なことに、藤井名人は6九歩と“受けの歩”を打ったのだ。
すでに逆転の手段が尽きていた永瀬九段は、同銀成と応じるよりなかった。藤井名人が141手目、3一角と王手をしたところで、永瀬九段は投了した。
将棋ライターの松本博文氏も「藤井名人が相手玉に詰みがあるのに詰まさなかったのは、わりと珍しいことかもしれません」と評した。松本氏はこの第2局をこう振り返る。
「永瀬さんの3三金型角換わりという珍しい戦型で始まりました。将棋のセオリーでは、3三に上がるのが金か銀か、どちらが好形かと言えば、99%は銀なんです。そこに永瀬さんはあえて金を上がるという変化球を投げ込んだ。藤井さんも意表を突かれたとは思いますが、いつものように自然に応じ続けた。途中の形勢は容易ではなかったものの、最後は藤井名人が勝利しています。
他の棋士もAIを使って日々研究を重ねたり、研究会で練習対局を繰り返して、強くなっています。現在の将棋界のトップクラスのレベルの高さ、層の厚さは、史上空前のものでしょう。
しかし藤井さんも、他の棋士以上のスピードで強くなっている。だから、なかなか追いつかれないという印象です。今年は叡王戦の挑戦権を争うトーナメントでは準決勝で敗れたため、八冠に復帰できるのは早くても来年以降になります。
今期名人戦はここまでの戦いぶりを見ると、このまま防衛する可能性のほうが高いかもしれません。挑戦者である永瀬九段は他棋戦の成績からしても、現在の将棋界では藤井名人に次ぐナンバー2だというのは、ほぼ衆目の一致するところだと思われます。藤井名人は、その強い永瀬九段に勝ち続けているわけですからね。当面はタイトル防衛を続けると見ている人が多いのではないでしょうか」