永六輔氏の孫にあたる映画監督の岡崎育之介氏(撮影/木村圭司)
ソープランドで働く女性が、ひょんなことから認知症の祖母の介護をすることに――そんな姿をコミカルに描いた映画『うぉっしゅ』が全国公開中だ。メガホンを握ったのは、作家・永六輔氏の孫にあたる岡崎育之介監督(31)。映画の狙いや、自身が制作に込める思いについて、介護分野に詳しいジャーナリストの末並俊司氏が聞いた。(文中敬称略)
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ソープ店で働く主人公・加那(中尾有伽)と、祖母・紀江(研ナオコ)のふたりが織りなす葛藤と交流。メガホンを握った岡崎育之介は「誰もが楽しめる、明るく楽しい、しっかりしたポップコーンムービーを作りたかった」と語る。
「風俗と介護」、ややもすると重くなりがちな世界を描いた作品だが、岡崎の言う通り、映画のトーンは終始明るくまとめられている。そこには監督自身の明確な狙いがある。
「デジタル全盛の今、映像のイメージはいくらでも作ることができます。フィルムっぽくシックな調子にすることももちろん可能です。でも、今回はあえて明るくクリーンなトーンで仕上げました。映画のことをよく知る方からすると、“安っぽい映像”と思われるかもしれません、でもこの映画ではそれが正解だと思っています。誰もが気軽に楽しめる映画。そのためには、映像はきれいでポップなほうがいいと判断しました」
映画主演が9年ぶりとなる研ナオコ(71)を祖母・紀江役に起用した意図を岡崎が語る。
「紀江おばあちゃん役は、ど真ん中の俳優さんじゃないほうがいいな、という思いがかなり早い段階から僕の中にありました。認知症の役なので、演技そのもので練り上げると、それが素晴らしければ素晴らしいほど、そちらに引っ張られるような気がした。だからいわゆる俳優さんではない人、そして、この映画のポップでファニーなイメージを体現できるとなったら、やっぱり研ナオコさんだという思いになった。ただし、オファーを受けてくれるかどうかは全くの未知数でしたけどね(笑)」