日本での上映の準備が進んでいる(【c】「Diamonds in the Sand」Film Partners)
映画の中でも、サラリーマンのヨージを演じるリリー・フランキーが、「ビデオケ」の騒音がうるさくて眠れず、迷惑そうに注意する様子が描かれている。「音」によって、良くも悪くも人とのつながりが生まれているのである。フィリピン社会を通して見えた、ジャヌスならではのユニークで鋭い視点だ。
「誰にも看取られずに1人で死を迎えるのは、誰からも愛されていない、気に懸けられていないという現実を示唆することであり、孤独死は大きな『恥』だとして恐れられるものではないでしょうか。
どのようにしたら自分の存在が人々から忘れられないか。あるいは記憶に留まるのか。たとえばお金や権力のある人は、銅像や博物館を作って歴史に名を刻もうとする。自分を覚えてもらいたいという願望は誰にでもある、自然な感情です。では一般の私たちは、どのようにしたら忘れられない存在になれるのか。上映後、その答えをそれぞれで考えてほしいです」
忘れられない存在になるために──あなたならどうするだろうか。本作は現在、日本での全国上映に向けて準備が進められている。
(了。前編から読む)
【プロフィール】水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年、三重県生まれ。上智大学外国語学部卒。新聞記者、カメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを中心にアジアで活動し、現在は日本を拠点にしている。2011年に『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)。