イタリアの映画祭で賞を受賞した(撮影:Alice Durigatto)
フィリピン在住の日本人たちからはよく、「昭和の日本を見ているような光景に出くわすことがある」という話を耳にする。フィリピンでの日常と少年時代の記憶を重ね合わせているのだ。
それはたとえば、マニラの路上で駆けずり回り、水たまりの中ではしゃいでいる子供たちのたくましい姿であったり、大人たちが真っ昼間から酒を飲んでギターを弾いている姿だったりである。
戦後間もない1947年から1953年にかけて、『向こう三軒両隣』というホームドラマがNHKで放送されたように、日本の昭和の暮らしには隣近所の付き合いが確かに存在していた。日本の地方都市では今もそうした文化はまだ残っているが、都市部では珍しくなっており、隣人の名前すら知らないのではないか。
ではリリー・フランキーが指摘するように、フィリピンの経済がさらに成長し、個人主義が浸透すれば、孤独死は起こり得るのだろうか。
ジャヌスは私の取材に「その質問に対する答えは持ち合わせていない」と語ったが、こんな言葉を捻り出した。
「日本の孤独死は文化的な側面があると思うのです。ですが私は、経済状態や経済的な地位が文化を育むとは考えていません。だから経済が成長すれば、孤独死が起きるという単純なものではないでしょう。
特にフィリピンは家族を大切にする文化が根強い。その理由を説明するのは難しいですが、おそらく(キリスト教という)宗教が関係しているのかもしれない。とにかく家族が一番なんです」