府中刑務所の食事見本。ふりかけが見える。2024年2月報道向け公開時(AFP=時事)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、刑務所での「ご飯のおとも」について。
* * *
「これ、勘弁してほしいんだよね」と暴力団幹部が渋い顔をした。「飯がまずくなるんだよ」という。昼飯でも食べようと、一緒に入った定食屋でのことだ。テーブルに座り日替わり定食を頼んだ。
焼き魚定食や刺身定食など魚料理専門の定食屋のテーブルには、その日、小瓶が並んでいた。どれもご飯のお供になる副菜で、食べ放題のサービス品だ。注文した定食が運ばれてくると、幹部は小瓶の1つを自分の方に寄せた。中に入っていたのは塩辛。「勘弁してくれよ」とつぶやきながら、茶碗に盛られた白飯の上にごっそりとのせると、大きく開けた口の中に放り込んだ。その食べっぷりを見ていると、塩辛が嫌いではないらしい。
美味そうに食べながら、幹部が他の小瓶の視線を落としてため息をついた。嫌いな物でもあったのだろう。だが幹部は次の小瓶にも手を伸ばした。小瓶の中身はアミの佃煮。箸の上に山盛りのアミの佃煮をのせるとじーっと見つめ「これだよ、これ」。塩辛やアミの佃煮で、なぜ飯がまずくなるというのか。想像がつかなかった。
「思い出すんだよ、刑務所の朝飯を」と幹部。「アミはこんなに茶色じゃなくて、もっと赤かった。あれは量販店の安い佃煮だろうね。それが小さな皿にちょこっと出てきてさ」と、幹部は自分の前に置かれた定食のプレートの右上に顎先を向けた。
刑務所の朝食は通常、主食の飯に味噌汁に副菜で、栄養バランスとコストパフォーマンスが求められている。飯は麦飯とよばれ、白米7に麦が3の割合といわれ、主食にコッペパンが出てマーガリンやあんこが付く日もあると聞く。味噌汁はどこの刑務所もけっこう薄いらしいが、服役している者たちの健康保持の面もあるのだろう。
「入所してすぐはこんなもん食えたもんじゃない、と思うけど、腹は空くから食うしかない。人間って不思議なもので、何度か食べるうちにその飯に慣れてくる。腹が減っているとそんなムショの飯でもうまいと感じるようになる」(幹部)