東京拘置所で提供された朝食と昼食。ふりかけとたくわん。2018年11月(時事通信フォト)
アミの佃煮も塩辛も朝食の小鉢に入っていたという。だがその日、定食屋のテーブルに並んでいた小瓶は、刑務所の食事いわゆる”ムショ飯”を思い出させるラインナップだったのだ。
「中にいる時はうまいと思えたんだけどさ」
刑務所の朝食には様々なフレーバーのふりかけ、焼き海苔や梅干し、漬物などが多いという話は聞いていた。「おかずは少ないからさ。飯を食うにはふりかけや佃煮がないとな。でもさ。味気ないもんだぜ。味噌汁に佃煮なんて」という幹部は「これもこれも」と目の前に置かれた小瓶を指さした。「アミの佃煮、たくわん、塩辛、海苔の佃煮、どれもこれも朝飯に出てきたものばかりなんだよ」
「中にいる時はうまいと思えたんだけどさ」と幹部。再び塩辛の小瓶に手を伸ばすと、飯の上にどっさりのせた。「出てくるのは小鉢に少しだけ。こんなに食べれないけどね」。刑務所の中で一番の楽しみは食事だというが、好きな物を自由に食べられる外では、当時うまかったはずの副菜は食べたい物でも、目にしたい物でもないようだ。
「これもだ」とぼやきながら、小瓶から細切りにしたまっ黄色のたくわんを2~3切れつまみ上げ、飯と一緒に食う幹部。「サービスだから文句は言えないけど、なんでわざわざこれなんだろうな」。飯時に質素だった刑務所の食事は思い出したくないらしい。
「暴力団入店お断り」と店先にステッカーを貼る店は少なくなったが、もし困っている店があれば、ムショ飯を思い出させる小鉢や前菜をズラリと並べたら効果があるかもしれない。